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投稿日: 2023.07.05 18:55
更新日: 2023.07.06 12:03

【中野信治のF1分析/第10戦】予選も決勝もかつてない順位変更。トラックリミット問題の背景とドライバー心理


F1 | 【中野信治のF1分析/第10戦】予選も決勝もかつてない順位変更。トラックリミット問題の背景とドライバー心理

 今年、FIAはトラックリミット違反を厳しめに取り締まっています。ただ、FIAが全てのトラックリミット違反を正確に把握できていないということは問題です(編註:FIAはオーストリアGP決勝でのトラックリミット違反の疑いは『1200件以上あった』と表明し、また『多くの違反が、スチュワードに紹介されていなかったことも判明した』としている)。そこはドライバー、チーム、そしてファンのみなさんにとっても大いに不満が残るところだと思います。

 全ドライバーがきっちりとトラックリミット違反を取られているのであれば、『ペースを落としてでもトラックリミットを絶対に守らないといけない』とドライバーは思うでしょう。でも実際はそうではなく、一部のドライバーが無線でライバルのトラックリミット違反を訴えたように、トラックリミット違反を取られている場合と取られていない場合があった。だからこそ、ドライバーたちも『トラックリミットを絶対に守らないといけない』という心理状態になれなかったのでしょう。

 今後、FIAとしてもアウト側の縁石の先をグラベルに戻すなど、何かしらの対策に取り組むことになりそうです。レッドブルリンクの縁石は低く広いので、しっかりと乗れてしまう。ドライバーは走れる部分があるなら行ってしまいますから、ターン9、ターン10の縁石の形状を変えることも検討のひとつには入るかもしれません。

中野信治氏も参戦した1997年F1第14戦オーストリアGP。当時ターン外側はグラベルだ(中央奥がターン10/手前がターン1)
中野信治氏も参戦した1997年F1第14戦オーストリアGP。当時のターン外側はグラベル(中央奥がターン10/手前がターン1)

 私がF1に参戦していた1997年〜1998年、このコースはA1リンクという名称でしたが、当時のターン9、ターン10の外側はグラベルでした。安全のためにアスファルト舗装のランオフエリアを設けたのだと思いますが、このターン9、ターン10では逆の効果が出てしまったのかもしれません。

 現代の安全基準に則った上で、ふたたびグラベルに戻すということも検討するべきでしょう。ただ、この問題は一朝一夕で解決できる問題ではなく、オーストリアGPに限った話でもないと思います。

 レース終了後、しばらく経って出された正式結果で多くのドライバーがペナルティを受けることになり、表彰台に上った3名の順位は変わりませんでしたが、4位以下が大きく順位が変わることになりました。

 現地を訪れたファンにとっては、サーキットを離れてからのペナルティによる降格でリザルトが変わるというのは残念ですし、そうなると今後の興行面でも影響は少なからず出てしまいます。今後対策に向けてドライバー、チーム、FIAが話し合い改善を進めることになるでしょうから、その変化を見守りたいと思います。

2023年F1第10戦オーストリアGP ターン10のランオフエリアには無数のタイヤ跡が残る
2023年F1第10戦オーストリアGP ターン10のランオフエリアには無数のタイヤ跡が残る

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