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投稿日: 2023.07.05 18:55
更新日: 2023.07.06 12:03

【中野信治のF1分析/第10戦】予選も決勝もかつてない順位変更。トラックリミット問題の背景とドライバー心理


F1 | 【中野信治のF1分析/第10戦】予選も決勝もかつてない順位変更。トラックリミット問題の背景とドライバー心理

 今回(角田)裕毅の16番グリッドからのスタートについては、「少し楽観的に行きすぎたかな、強引だったかな」とも思いましたが、トライするいう面で見れば、「日本人でもこういうアクションを起こせるドライバーが出てきたな」と感じながら見ていました。ターン1のインのインに入っていく姿はなかなか見られるものではありません。

 残念ながらターン1のエイペックスを抜けたあたりでエステバン・オコン(アルピーヌ)のリヤと接触し、フロントウイングにダメージを負いましたが、いいチャレンジではあったと考えています。その直後のターン3、ターン4で見せたアウトのアウトから仕掛ける動き、よほどブレーキングに自信があるドライバーにしかできません。

 スタート直後でタイヤも温まりきっていない状況でああいう動きができるのは、見ていて気持ちがいいですね。普段ならフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)がやるような『みんなアウト側に行くならインに行けばいいじゃん!』という動きは、本当に自信がないとできません。

 残念ながらターン4で飛び出してしまいましたし、そのコースオフの影響もあってコース上にマシンを止めることすら大変な状況となり、最終結果は19位でしたが、オープニングラップの裕毅は見ていて気持ちが良かったです。飛び出しはしましたけど、レース関係者の目線で見ると裕毅の動きは好印象です。チーム内外から『こういう動きができるドライバーなのだ』と見られると思いますし、周囲のドライバーには『絶対に油断できない存在だ』と意識させる動きです。

 アグレッシブに行くということは諸刃の剣でもありますし、100パーセント成功することでもありません。ただ、オーバーテイクは想像力・発想力の世界でもありますから、ああいった動きの発想ができるかどうかが大事です。そこが裕毅のなかでイメージとしてある。それは素晴らしいことだと感じています。

2023年F1第10戦オーストリアGP 角田裕毅(アルファタウリ)
2023年F1第10戦オーストリアGP 角田裕毅(アルファタウリ)

【プロフィール】
中野信治(なかの しんじ)

1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダ・レーシング・スクール・鈴鹿の副校長として後進の育成に携わり、インターネット中継DAZNのF1解説を担当。
公式HP:https://www.c-shinji.com/
公式Twitter:https://twitter.com/shinjinakano24


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