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投稿日: 2023.08.08 12:00
更新日: 2023.08.08 03:31

【中野信治のF1分析/第13戦】ベルギー訪問で感じた日本人ドライバーの成長。好調マクラーレンと対象的なフェラーリ


F1 | 【中野信治のF1分析/第13戦】ベルギー訪問で感じた日本人ドライバーの成長。好調マクラーレンと対象的なフェラーリ

 さて、F1は第13戦ベルギーGPを終え、8月25〜27日に開催される第14戦オランダGPまで短いサマーブレイクに入りました。これまでの前半13戦を振り返ると、レッドブル……というよりもフェルスタッペンが際立った強さを見せました。

 その要因としては当然、レッドブルのマシンの良さもあります。今のレッドブルは一発の速さよりも決勝向きで、タイヤに優しくレース中のタイヤのデグラデーション(性能劣化)が緩やか、DRSの効きが他車と比べて良いなど、レースにおいて強い要素が揃っています。それに加えてフェルスタッペンの巧みなタイヤマネジメントや、レース状況を読む心の余裕も相まってレッドブルの強さが際立つ結果が続いたのだと思います。

フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)
2023年F1第13戦ベルギーGP フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)

 シーズン序盤はアストンマーティンがレッドブルに次いで速く、レッドブルとアストンマーティンのクルマの動き自体も似ている部分もあったりで、『緑色のレッドブル』は強いなというイメージもありました。ただ、そこから各チームが徐々にアップデートを投入し、その中でアストンマーティンは出遅れ、勢力図にも変化がありました。

 アストンマーティンも当然アップデートを投入していますけど、他チームほど大きな変化がないというのが印象です。一方、アップデート投入で成績を上げてきたのがマクラーレンです。シーズン序盤は2台揃ってノーポイントに終わったレースも少なくはありませんでした。ただ、アップデートが機能して、マクラーレンが速さを取り戻しました。

2023年F1第13戦ベルギーGPスプリント ピット出口のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の横をオスカー・ピアストリ(マクラーレン)が走り抜ける
2023年F1第13戦ベルギーGPスプリント ピット出口のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の横をオスカー・ピアストリ(マクラーレン)が走り抜ける

 ドライバーのランド・ノリスのスピードやセンスは知られていますが、今年F1にデビューしたオスカー・ピアストリも輝きを放っています。ノリスというドライバーはフェルスタッペンやハミルトン、シャルル・ルクレールなどと対等に戦えるセンスを持っています。そのノリスとピアストリの走りを比較すると、新人であるはずのピアストリがノリスにまったく劣っておらず、これは嬉しいサプライズでしたね。

 以前、マクラーレンがノリスとリカルドというドライバー体制だった際に、このふたりのデータを比較しました。その際はノリスがリカルドをデータ上でも圧倒していました。一方、ピアストリはそのノリスを上回る部分もあるほどです。ベルギーGPでのスプリントの走りを見ても、ピアストリという存在はいずれチャンピオン候補のひとりに数えられるだろう逸材だと感じます。

2023年F1第13戦ベルギーGPスプリント オスカー・ピアストリ(マクラーレン)の2番手獲得を祝うチーム
2023年F1第13戦ベルギーGPスプリント オスカー・ピアストリ(マクラーレン)の2番手獲得を祝うチーム

 アップデートがうまく機能し、ノリス、ピアストリという若い才能を有するマクラーレンの未来は明るいと感じました。そんなマクラーレンと対照的なのがフェラーリです。今年のフェラーリは戦略に関しても、チームの指示系統に関しても、いったい何をしたいのかがなかなか見えてこないと言いますか……。これに関してはフェラーリ内の役職者や担当者の責任レベルではなく、フェラーリが長年作り上げてきた仕事の進め方なども、現代のF1に求められる迅速な判断や指示への対応を難しくさせている印象を受けます。

 それによってドライバーもメンタル面で落ち着けない状況下でレースを戦うことになり、ミスが出たり、走りに安定性が出なかったりに繋がるのだと思います。ただ、フェラーリに関してはベルギーでのルクレールの3位という結果を考えても、アップデートがまったく機能していないということはないでしょうね。ですが、まだ一貫性はないと感じます。

シャルル・ルクレール(フェラーリ)
2023年F1第13戦ベルギーGP シャルル・ルクレール(フェラーリ)

 オランダGPより始まるシーズン後半戦は『誰がフェルスタッペンを止めるか』ということが焦点となるでしょう。ベルギーGPまでの前半戦を見る限り、対フェルスタッペンの急先鋒となりそうなのが、マクラーレンの2台です。若いふたりはチャンスがあれば相手がフェルスタッペンあろうと関係なく、戦いを挑めるドライバーだと思います。

 ただ、現状のマクラーレンのマシンはタイヤのデグラデーションが早く、またストレートスピードも決して速くはありません。そのためサーキットを選ぶとは思いますけど、マクラーレンのクルマにハマったサーキットでは、レッドブルとフェルスタッペンに勝負を挑める可能性はあるでしょう。チャンスは決して0パーセントではないと思いますし、そうあってほしいですね。

2023年F1第13戦ベルギーGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2023年F1第13戦ベルギーGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

【プロフィール】
中野信治(なかの しんじ)

1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダレーシングスクール鈴鹿のバイスプリンシパル(副校長)として後進の育成に携わり、インターネット中継DAZNのF1解説を担当。2023年はドライバーとしてスーパー耐久シリーズST-TCRクラスへ参戦。
公式HP:https://www.c-shinji.com/
公式Twitter:https://twitter.com/shinjinakano24


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