──今回、ヤン選手ご自身の活躍が映画となりましたが、そのことについてはどのように感じていますか。
ヤン:聞いていたことではありましたが、実際に映画になってみると、不思議な感覚です。映画というのは永遠に残っていくものですから、自分の名前が永遠に残るということでもあると思いますが、そのこと自体がどういった意味を持つのかはすぐには理解できそうにありません。ですが、自分のストーリーを世界に伝えるということは、とても恵まれていて幸運なことだと思います」
──『グランツーリスモ』でドライビング技術を磨いているころ、当時の憧れだったドライバーはどなたでしたか
ヤン:自分がインスピレーションを受けた人は、実は一人しかいません。何年も前に亡くなってしまっていますが、僕にとって子どものころからのヒーローはコリン・マクレーでした。彼は常にフルスロットルでドライブしていました。人間として、ドライバーとしても、短所のある人物であったかもしれませんが、常にフルアタックで挑むことが魅力なドライバーでした。
彼が毎回フルアタックで強烈なドライブをする度に、レーシングカーに個性が宿るような気がしたのを覚えています。なので、日本で自分が「スーパーGT」などをドライブするときも、それにならって常にフルスロットル、フルアタックでした(笑)。
──映画ではル・マンが舞台のひとつとなっていますが、ご自身が当時参戦されたル・マン24時間レースはいかがでしたか。
ヤン:ル・マン24時間レースは一番好きなレースですが、今ではやり残したことがあるように感じています。もちろんいい戦いができたことは誇りに思っていますが、やっぱりナンバーワンになりたいですね。なので、将来はル・マン24時間レースに戻りたいです。
──日本のレースでの一番の思い出は?
ヤン:2016年全日本F3選手権の岡山でのレースです。自分にとって、F3で初めて優勝することができたレースでしたし、20秒以上の差をつけて勝利することができました。その時は、『ついにF3を制覇することができた』と思いました。また、スーパーGTのGT500クラスで走ったことは大切な思い出です。カルソニックブルーのマシンで走った2017年と2018年のチームインパルでは、レジェンドであるオーナーの星野一義さんが、常にフルアタックで走れと言ってくれました。本当にいろんなことを彼から学ばせてもらいましたし、レーサーとして一番好きなレジェンドのひとりです。
──日本のファンへ映画の見どころを教えてください
ヤン:この映画は、レーシングカーに乗っているような感覚をどこまでも味わうことのできる作品です。また、家族の模様も描かれており、たくさんの光と闇が詰まっている重層的な映画となっていて、ここに自分の歩んできた人生、キャリアそのものがあります。東京も登場しますし、日本への言及もとても多いです。それは僕にとってとても重要なことでした。ぜひ映画館に足を運んで、この映画の世界とレーシングカーの魅力を楽しんでください」