「結局のところ、彼(アズコナ)に対するペナルティは何もない。なぜなら彼はチャンピオンシップ争いに参加していないからだ。だからおそらく彼は良い仕事をしたと言えるだろう」と、予選中における『他車への妨害行為』で3グリッド降格の処分を受けたライバルに言及するハフ。
「僕が愚かなのかもしれないが、彼が意図的にそうしたのではないと思いたい。 もしそうだとしたら、それは絶対に嫌なことだと思うから。今季は滑りやすいコースで見られたように、今週のアウディにはフロントエンドのグリップが不足している。ただ予選では苦戦しても、レースでは状況が変わることもある。どうなるか見てみよう」
こうして迎えたレース1のオープニングでは、併催TCRアジアチャレンジの招待ドライバーに関わるイエローこそ発生したものの、ポールシッターがレースを支配。昇格3番グリッド発進となったネストール・ジロラミ(マックプロ・レーシング/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)を振り切ったミケリスが“ライト・トゥ・フラッグ”を達成してみせた。
その背後では、再三にわたるリスボアでのサイド・バイ・サイドをしのぎ切り、アズコナを封じ込んだハフが3位表彰台に滑り込み、スタートの大失策で6位に終わったエルラシェールを含め、チャンピオン候補3名全員が日曜の最終戦に向け可能性を残す状況となった。
明けた日曜もシーズンフィナーレらしい荒れた幕開けとなり、グリッドで失速した前走車に突っ込んだTCRアジアチャレンジのアウディがサスペンション損傷でスタックすると、マンダリンでワイドになった古豪ギャリー・ロジャース・モータースポーツ(GRM)所属のベン・バルグワナ(プジョー308 TCR)がバリアに激突して大破。ここでセーフティカー(SC)が導入される。
そのリスタート後も、予選トップ10リバースでポール発進だったウルティアが好スタートを切り、フレデリック・バービッシュ(コムトゥユー・レーシング/アウディRS3 LMS 2)やビョーク、ハフらを抑えて序盤のリードを維持していく。
全11周の勝負も終盤に差し掛かろうかという8周目。マンダリンの大外からウルティアをパスしたバービッシュが首位に浮上し、その背後ではハフもビョークを仕留めて3番手へ。そのまま隊列が山間セクションに入ると、左中速のドナ・マリア・ベンドで事件が起こる。
車載映像からは減速したウルティアの後部にハフが追突。アウディのコクピットで抗議のハンドサインを送った直後、ハフの視界は突如開口したボンネットに遮られてしまう。この衝撃でフロントガラスも割れたイギリス出身の元世界王者は、修理のためピットインする以外に選択肢はなく、これで同地通算12勝目とタイトル挑戦への望みは絶たれてしまった。


