更新日: 2024.05.29 17:09
【インディ500レビュー】2連覇達成のニューガーデン。オワードとの一騎打ちで見せた“オーバル最強”の実力
前述の通り、レース終盤のトップ争いはニューガーデン、ロッシ、オワード、ディクソンの4人によって繰り広げられた。ディクソンは予選21番手から優勝争いに絡んできた。それは彼がシーズン中にも幾度も披露してきた、イエローを利用してピット・タイミングをずらす作戦を見事に成功させてのことだった。
しかし、一時はトップに立ったディクソンだが、そのままライバルたちを後方に封じ込めて逃げ切るだけのスピードはなく、バトルはニューガーデン対ロッシへと変わり、ロッシをターン1手前で豪快にパスしたチームメイトのオワードが、ニューガーデンとの一騎打ちへと名乗りを上げた。
マシンのハンドリングが完璧ではなかったオワードだったが、インディカードライバーの間でも定評のあるマシンコントロール能力の高さで、オワードはインディ500優勝に王手をかける。
最終ラップのターン1に彼はトップで入り、ターン2もトップで回った。メキシコ人ドライバーのインディ初勝利なるかと思われたが、バックストレッチのオワードのドラフティングを使ったニューガーデンは、息をのむ間もなく一気に差を詰め、ターン3でアウトから抜き去った。
今回、雷雨によってスタートが4時間も遅れた決勝レース。フィニッシュ時刻は夜の8時近くになっており、終盤土壇場を迎えてから急速に路面温度が下がっていた。そのコンディション変化に的確に対応し、最後の勝負まで攻め時を耐え、タイヤの状態をもっとも良いものとしていたのがニューガーデンだったようだ。
「オワードは焦って先頭へ出るタイミングを見誤った。あと半周は待つべきだった」という声もあるが、風向きなどの影響もあってかターン3から4側の方がスピードを乗せやすく、彼が前に出るのはターン1でしか難しくなっていた……などの事情があった可能性も考えらえる。
■2002年以来となる2連覇達成のニューガーデン「フェアに戦ってくれた」
ニューガーデンが飾ったインディ500での連勝は、2001年と2002年にエリオ・カストロネベスが記録して以来となった。当時のカストロネベスを走らせていたのも、今回と同じチーム・ペンスキー。ボルグワーナーが提供する連勝者のためのボーナスも加算され、ニューガーデンの優勝賞金は史上初の400万ドル越えとなる420万8000ドルとなった。
凄まじいバトルの末に勝者となったニューガーデンはウイナーインタビューで、「オワードがフェアに戦ってくれた」とライバルを讃えた。彼らはターン3をサイド・バイ・サイドで回ったが、あそこでもし接触があれば、外側の壁へクラッシュしていたのはアウト側から並びかけたニューガーデンの方だったかもしれない。しかし、オワードはラインをホールド。0.3秒差の2位でのゴールとなり、涙を流してクルーたちに勝利を逃したことを詫びた。
オワードは2020年にマクラーレン入りして以来、インディ500では毎年トップ争いに絡む活躍を見せている。そして今年は、もっとも優勝に近づいた。この悔しさをバネとして、初勝利を掴む時がくる可能性は高い。2012年に最終ラップのトップ争いでクラッシュした佐藤琢磨が、5年後に優勝に手を届かせたように。