更新日: 2024.06.06 17:07
【インディ500コラム】シボレー勢が圧倒。ホンダ“孤軍”のチップ・ガナッシ隊と躍進のダークホース
最終的に、チーム・ペンスキーとアロウ・マクラーレンの対決となった今年のインディ500だったが、彼ら以外のシボレーチームにも目覚ましい活躍を見せたところがあった。決勝を中団からスタートしたエド・カーペンター・レーシング(ECR)とA.J.フォイト・エンタープライゼスだ。
ECRは前々から、A.J.フォイトは昨年からインディ500で速くなった。とくにECRは、予選用のダウンフォースをトリムアウトしたセッティングを得意としている。それはスプリントカー出身であるチームのボス、エド・カーペンターが築き上げたスタイルで、彼は2013、2014、2018年と3回もインディ500のポールポジションを獲得した。
それを受け継いだのが、オランダ出身ドライバーというのがまたおもしろい。ECRでインディカーを走らせ始めたリナス・ヴィーケイは、持ち前のマシンコントロール能力の高さでカーペンター流をすぐにマスターした。
まだ予選最速こそ獲れていないが、デビューの2020年から予選は4番手、3番手、3番手、2番手と、とんでもない結果を出し続けて来ている。今年は予選一日目にクラッシュを喫しながらも、当日中に組みなおされたマシンでトップ12入りを勝ち取るなど、その速さに陰りはなかった。
今年の7番手グリッドは、彼のキャリア最低だったのだ。ECRの課題は、レースで安定して上位を戦えるマシン。そのために、チップ・ガナッシ・レーシングで去年佐藤琢磨を担当したエンジニア、エリック・カウディンを獲得してもいる。今年は歯車のかみ合わせに時間がかかったようだが、来年に期待したい。
■突如速さを得たA.J.フォイトの2年目
A.J.フォイトは2023年、サンティノ・フェルッチが予選4番手、ルーキーのベンジャミン・ペデルソンも優勝経験者のウィル・パワーを上回る予選11番手となった。彼らのマシンはレースでも速く、2023年のフェルッチはジョセフ・ニューガーデンとマーカス・エリクソンのすぐ後ろの3位でゴールした。
今年のフェルッチは予選6番手。僚友スティング・レイ・ロブはラスト3グリッドを争う危機に面することなく、23番手で悠々と予選をクリアし、決勝ではピットタイミングの良さからトップに立った。さらに予選最速のスコット・マクラフラン(チーム・ペンスキー)らを相手にその座を守り続けもし、抜かれても抜き返すなど、優勝候補に真っ向から立ち向かうダークホースにもなってみせた。A.J.フォイトのマシンはスピードと安定感を両立させていたのだ。
A.J.フォイトのマシンは、2023年から急に速くなった。それは、チップ・ガナッシ・レーシングでスコット・ディクソンを担当していたエンジニア、マイケル・キャノンをテクニカルディレクターに迎えてからのことだ。そのセッティング欲しさに技術提携をオファーし、締結に至ったのがチーム・ペンスキー。そして彼らはまんまとフロントローを独占した。
インディ500ではエンジンパワーが大きくものをいうが、ダウンフォースを削ぎ落としてもグリップの得られるサスペンションセッティングも重要だ。アロウ・マクラーレンには数年前からそれが備わっており、エンジンが優勢となった今年は、彼らにとって大きなチャンスだった。
好調なのはマクラーレンだけでなく、マシンのレベルを一歩上げてきたチーム・ペンスキーが勝利をさらっていったが、全体を見れば、車体を高レベルに仕上げたシボレーチームが今年は例年よりも多く、さらにパワフルなエンジンとの相乗効果により、今年は昨年以上の優勢となっていたのだ。