海外レース他 ニュース

投稿日: 2024.06.27 14:27

テオ・プルシェールがインディカーで残した爪痕。復帰への道筋と後任ノーラン・シーゲルの才能


海外レース他 | テオ・プルシェールがインディカーで残した爪痕。復帰への道筋と後任ノーラン・シーゲルの才能

 ザウバーがプルシェールをふたたびリザーブドライバーとして雇い入れるかは不明だが、彼らのプルシェールに対する高評価に変わりはなく、セカンドチャンスを用意すべく動いているとの情報がある。

 これはザウバーの後押しを受け、プルシェールは今年中にインディーカーに復活参戦し、来年もインディカーで走るという計画だという。将来的なF1参戦に向け、F1とは大きく異なる経験をアメリカで積ませようという、これまでのヨーロッパのチーム、あるいはF1チームの間にはほぼ見れれなかったポジティブな考え方だ。

 プルシェールの2024年中のインディカー参戦が実現するとしたら、それはデイル・コイン・レーシング(DCR)からになるだろう。彼らの2台のマシンはどちらも最終戦までのドライバーが確定していないからだ。お世辞にも強力な体制とは言えないDCRだが、経験豊富なスタッフや多くのチームメイトから学べることも少なくないだろう。

テオ・プルシェールがインディカーで残した爪痕。復帰への道筋と後任ノーラン・シーゲルの才能
シート模索先と噂されるデイル・コイン・レーシングのオーナーであるデイル・コイン

 2025年シーズンに向けては、DCR以外のチームはシートがほぼ埋まっている状況だ。考えてみるならば、今季5台体制のチップ・ガナッシ・レーシングに居る若手をひとり押し出すか、現在3台で戦っているアンドレッティ・グローバルがさらに1台増やす、以外には有力チームのシートを獲得するチャンスはなさそうだ。

 4月に新規参戦の計画を発表したイタリアのプレマ・レーシングの候補に上がる可能性は考えられるが、過去の新規チームがそうだったように、初年度から多くを期待することはできない。インディ500も考えると、プレマよりもDCRの方が良い選択と言えるかもしれない。

■インディ500ウイナーも太鼓判を押す19歳シーゲル

 最後に、プルシェールに代わってアロウ・マクラーレン6号車のシートを得たノーラン・シーゲルについても書いておこう。

 シングルシーターとスポーツカーで年齢に似合わぬ豊富な経験を積んできている彼は、インディカーの登竜門シリーズであるインディNXTに昨年からフル参戦し、デビュー年にして2勝を挙げてランキング3位につけた。

テオ・プルシェールがインディカーで残した爪痕。復帰への道筋と後任ノーラン・シーゲルの才能
新たにアロウ・マクラーレンの6号車のシートを得たノーラン・シーゲル

 2023年のシーズン終盤には、鈴鹿サーキットで行われたスーパーフォーミュラ合同/ルーキーテストにもB-Max Racing Teamから参加している。2024年は、インディNXTでのチャンピオン候補最右翼として参戦し、インディカーでの経験も積もうと数戦に出場する計画を立てていた。

 開幕した2024年インディNXTでは、HMDモータースポーツのエースとして開幕戦で優勝を飾り幸先の良いスタートを切ったが、その後のNXT戦では勝ち星をあげられず。インディカーの方は、ザ・サーマルクラブで開催されたミリオンダラー・チャレンジ(ノンチャンピオンシップ戦)でデイル・コイン・レーシングから初めての出走を果たし、同チームより第2戦ロングビーチで正式にデビューを飾った。

 インディ500は惜しくも予選落ちに終わったが、ここでアドバイザーを務めたアロウ・マクラーレンのスポーティングディレクターであるトニー・カナーン(2004年シリーズチャンピオンで2013年インディ500ウイマー)に感銘を与え、彼の強力なプッシュによってアロウ・マクラーレン入りは決まったという。

 インディNXTでのシーゲルは、第5戦デトロイトでメカニカルトラブルにより上位フィニッシュを逃し、タイトル獲得の可能性が下がったことも影響してか、第7戦ロードアメリカではフンコス・ホーリンガー・レーシングのマシンに乗るチャンスを得ると、インディNXT卒業を決意。これがアロウ・マクラーレンを刺激したと言われており、『ライバル勢にさらわれる前に契約をしてしまえ』という急激な方針転換を促した。

 さらにシーゲルは、マクラーレンCEOのブラウンが共同オーナーを務めているユナイテッド・オートスポーツから今年のルマン24時間に出場(その縁もあって、インディ500でカナーンがアドバイザーを務めた)。ル・マン初出場でLMP2クラスの優勝を飾ったこともプラスに働き、地元カリフォルニアのラグナ・セカでのレースより、アロウ・マクラーレンのレギュラードライバー抜擢に繋がった。

テオ・プルシェールがインディカーで残した爪痕。復帰への道筋と後任ノーラン・シーゲルの才能
2024年WEC第4戦ル・マン24時間では、LMP2マシンに乗ってクラス優勝を飾った

 その才能の高さは多くの関係者が認めるところで、アロウ・マクラーレンのインディカープロジェクトで陣頭指揮をとるギャビン・ウォードも「チームの長期的なビジョンを安定させるための起用」と話している。成績だけを見れば、シーゲルは入門・中級フォーミュラカーシリーズで一度もタイトルを獲得したことがなく、ステップアップを急ぎ過ぎてきた感もあるが。

 インディNXTにおいても、パト・オーワード、カイル・カークウッドやリヌス・ルンドクヴィスト、クリスチャン・ラスムッセンといったチャンピオンたちや、オーワードとチャンピオンの座を争ったコルトン・ハータや、カークウッドと戦ったデイビッド・マルーカスなどと比較すると、成績でもレースぶりでもインパクトは弱い印象だ。

 アロウ・マクラーレンのシート獲得も、父親のビジネスとチームのメジャースポンサーとの関係、あるいは、巨額の持ち込み資金による……などの噂も流れている。F1も戦うマクラーレンらしく、19歳という若さに大きな可能性を見出しており、2024年シーズンの残り9戦を経験にあて、2025年シーズンからトップレベルでの活躍をしてもらいたいとの期待を抱いているのだろう。

テオ・プルシェールがインディカーで残した爪痕。復帰への道筋と後任ノーラン・シーゲルの才能
アロウ・マクラーレンでの初戦ラグナ・セカは、予選23番手から12位フィニッシュ。プルシェールのデビュー戦と同じ11ポジションアップの活躍を見せている


関連のニュース