一方、ロドリゲスがもう少し長く守備を続けてくれることを期待していた首位ハルムだが、残り2周でバックミラーにヨッヘンとキスの2台が迫ってくる。チェッカーフラッグが振られるまで1.5秒の差がわずか1秒に縮まる緊迫した状況のなか、プレッシャーを見事に処理した彼女が待望の復活勝利を飾った。
「こんな大勢の観客が見守るグランドスタンドの前で、パートナーやファンと一緒にここ『トラック・グランプリ』で勝利することは、まさに夢ね!」と喜びを語ったハルム。
「残念ながら前回のレース(ゾルダー)では同じ機会を活かすことができなかったけど、この選手権と密度の高いフィールドを考えると、この勝利には本当に満足している。チームと、ここ現場にいる多くのファンに多大な感謝を送りたい。みんなのサポートは本当に素晴らしいです」
明けた日曜も、ハーンに対しわずか0.274秒と差は縮められつつ、キスが今季8度目のポールポジションを獲得し、レース3がスタート。しかしここで真紅のMANにはギアボックスのトラブルが疑われ、一時は4番手までポジションを下げてしまう。
「ギアを選ぼうとしたが、セレクトした場所に入らなかった」と明かしたキスだが、なんとか宥(なだ)め賺(すか)して走行可能なギアをチョイスし、サッシャ・レンツ(SLトラックスポーツ30/マン)やロドリゲスを仕留めると、終盤にはハーンのリヤバンパーに迫って首位奪還を狙う勢いを取り戻す。
ここで11周目にハーンが小さなミスを犯したのを見逃さなかったキスは、シケインを抜ける際にスイッチバックを決めてファイナルラップへ突入。ニュルブルクリンクのファンが待ち望んでいたハーン勝利の夢も打ち砕く、今季13勝目を手にした。
迎えた最終ヒートも最前列からスタートしたハルムだったが、ここでターン1のホールショットを奪ったのは隣に並んでいたアルバセテで、チェッカーフラッグまでその位置をキープ。最終的にハーンやレンツが表彰台に上がり、そして王者キスにもかわされた彼女は5位に留まる結果となった。
最終レース4で今季初のポディウム圏外となったキスだが、ここからシリーズは本格的なサマーブレイクを経ることに。続くFIA ETRCの2024年シーズン第5戦は、8月31日~9月1日にチェコ共和国のモストで再開のときを迎える。



