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投稿日: 2024.08.30 14:53
更新日: 2024.08.30 15:15

パロウ、迫るパワーから逃げ切れるか。いよいよ佳境のタイトル争いはオーバル3連戦へ/インディカー


海外レース他 | パロウ、迫るパワーから逃げ切れるか。いよいよ佳境のタイトル争いはオーバル3連戦へ/インディカー

 全長1マイルのミルウォーキーと、全長1.33マイルのナッシュビル。これら2コースでの3レースで最も高得点を記録しそうなのは、ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)だ。

 彼にはタイトルの目はないが、WWTRで2017、2021、2022、2022、2024年に勝ち、アイオワでは2023年のダブルヘッダーを両制覇。2016、2019、2020年の第2レース2022年のレース1でウィナーとなっていて、インディ500も2連覇中のオーバル王者だ。ニューガーデンのチームメイトたちも、ショートオーバルは得意としており、今シーズンのアイオワで勝ったのはパワーとマクラフランだ。最終3戦もペンスキー勢の好走は間違いないだろう。

ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)
2024年インディカー第13戦WWTR 優勝を飾ったジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)

 それに対して、パロウとハータはオーバル未勝利ドライバーだ。マクラフランはフル参戦4シーズン目でオーバル初勝利を挙げた(今年)が、パロウは今年が5シーズン目、ハータは今年が6シーズン目に入っても、まだオーバルでの勝利には手を届かせることができていない。

 もちろん、勝つためにはオーバルで速いマシンが必要で、それを与えられていたのがマクラフラン、そうでなかったのがパロウとハータという見方もできるだろう。ハータは今年のアイオワでポールポジションを獲得しており、パロウも今年のアイオワ・レース2で2位、昨年のアイオワ・レース2で3位フィニッシュを記録しており、オーバル初勝利は時間の問題と言えよう。

 パロウはドライバーとしての完成度の高さから、2年連続、この4年間で3回目となるタイトル獲得の最有力候補となっている。オーバルレースではライバル勢に分があるなかでも、しぶとくクレバーに走り抜いて上位フィニッシュし、ポイントを重ねる力が彼にはある。

 そうするための秘訣を尋ねると、「ポイントのリードを守ろうとしてはいけない。普段と同じように優勝を目指す。そう心がけている。いつもと違うことをすれば、いつもと違う結果を手にすることになるから」とパロウは説明した。また、「オーバルでの初勝利を早く挙げたい。しかし、“それがどうしても欲しい”と焦ってはいない。勝てる日はいつか必ず来る、と考えているので」とも語っている。安定した速さと決勝での勝負強さを武器とする、パロウなりのオーバルの戦い方なのだろう。

 そのパロウにとって怖いのはアクシデントとトラブルだ。なすすべなく失速するような事態なく、パワーやハータと最終戦までフルに力を出し切っての戦いを見せて欲しいものだ。

ウィル・パワーとアレックス・パロウ
2024年NTTインディカー・シリーズ第11戦アイオワでのバトルでは、ウィル・パワーに軍配が上がった

 一方パワーは、追う立場の者に与えられるアドバンテージを理解している。

「失うものは自分の方が圧倒的に少ない」と彼は話している。シーズン3勝目を挙げたポートランドでは、「今の自分にとっては、どんな勝利にも非常に大きな意味がある。こうして優勝争いを続けていられる自分は本当に幸運だ」と、ペンスキーで走り続けられていることに対して深い感謝の意を披露。

 悟りの境地に達しているかのようなコメントが多くなっている彼は、「ミルウォーキーはとても興味深い週末になる」と、遠くに視点を送りながら言った。そこにはフラットなショートオーバルで2連勝を挙げる自らの姿が見えていたのか……。

 その想定に近い成績を残せば、彼はパロウとの差をかなり縮めることができる。パロウが両レースで2位フィニッシュしたら、その差は20点ほどしか縮まらないが、パロウの2戦連続2位よりもパワーの2連勝の方が可能性は高い。オーバル3レースでの大逆転は起こり得るということだ。

ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)
自身3度目の王座獲得を目指すウィル・パワー(チーム・ペンスキー)

 さらにパワーには、チームメイトたちからの援助も期待できるかもしれない。ニューガーデンとマクラフランがパロウとの間に入ってゴールしてくれれば、その分だけポイント差は縮まる。しかし、このふたりに頼るのは諸刃の刃でもある。ふたりももちろん優勝候補に入ってくる速さの持ち主だ。チームオーダーが出ないならば、ニューガーデンやマクラフランが勝つケースも充分に考えられる。そうなれば、パワーの稼ぐポイントは減ってパロウとの差を埋められない。

 ファンとしては、ハータがオーバル初勝利をあげ、そのままの勢いでミルウォーキーで2連勝、もしくはそれに近い大活躍を見せ、史上稀に見る僅差で3人が最終戦へ……となる展開がもっとも盛り上がるだろう。しかし、そこには前にも触れた通り、パロウとパワーの両方にアクシデントやメカニカルトラブルといった不運が襲いかかり、獲得ポイントが少なくなる必要がある。

 チャンピオン争いを行うメンバーがミルウォーキーでもナッシュビルでも優勝争いをする可能性は充分にある。しかし、タイトルの可能性を失ったドライバーたちは、1戦々々での勝利を狙って来る。最終3レースでは、ディクソンはもちろんのこと、WWTRで優勝目前まで行ったデイビッド・マルーカス(メイヤー・シャンク・レーシング)、パト・オワード(アロウ・マクラーレン)、ポートランドでキャリア初PPを獲得したばかりのサンティノ・フェルッチ(A.J.フォイト・エンタープライゼス)らが好パフォーマンスを見せそうだ。

(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)

インディカーが新型ハイブリッドエンジンをテスト。ミルウォーキー・マイルで20台が周回重ねる
6月にミルウォーキー・マイルで行われたハイブリッドテストでは、ウィル・パワーがトップタイムをマークしている。なお、パロウらチップ・ガナッシ・レーシング勢はル・マン24時間レーステストデーのため不参加となっている


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