その後、ステージ2は2023年王者のライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が制覇し、今季もチーム・ペンスキーが盤石の体制であることを誇示したが、残り38周でデブリ由来のコーションが発動すると、そこからはレースの様相が一変。デイトナらしいラストの攻防に向けた肉弾戦が繰り広げられる。

 残り15周となる186周目に、まず3番手にいたリッキー・ステンハウスJr.(Hyakモータースポーツ/シボレー・カマロ)がロガーノを牽制にいった動きがクラッシュの引き金となり、ここでブレイニーを含むペンスキー艦隊と、ノア・グラグソン(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)、カイル・ブッシュ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)、週末好調のブラッド・ケセロウスキー(RFKレーシング/フォード・マスタング)、そして今季のエキシビジョン“Clash”覇者チェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)らが姿を消すことに。

 残り8周で迎えたリスタートからは、デュエル2勝者のオースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が僚友の仇討ちとばかりに先頭集団を牽引したが、残り5周で4番手コール・カスター(ハース・ファクトリー・チーム/フォード・マスタング)が前方のクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)をプッシュすると、196周目に外壁に激しく衝突したベルの20号車は、そのままSAFERバリアに跳ね返って車列後方のライアン・プリース(RFKレーシング/フォード・マスタング)と激突してしまう。

 これで宙を舞ったプリースの60号車マスタング“ダークホース”は、屋根から着地して滑走したのち直立。この夜における最大のクラッシュに巻き込まれたプリースにとっては残念ながら珍しい経験ではなく、2023年のダラデガ、昨季2024年夏のデイトナに続く、立て続けのバレルロールとなった。

「クルマがあんなふうに飛び出したとき、周囲の動きは本当に静かになり、娘のことばかり考えていた」と明かしたプリース。「無事に帰って来られたのは幸運だった。風の強い日にトラックに出ると、ディフューザーのせいか、それとも……とにかく、このクルマがベニヤ板のようになる原因が何かは分からない。僕は無事に逃げられたが、誰かが逃げられない状況に本当に近づいている」と現行Next-Gen規定のスーパースピードウェイ仕様にも警鐘を鳴らす。

残り38周でデブリ由来のコーションが発動すると、そこからはレースの様相が一変。デイトナらしいラストの攻防に向けた肉弾戦が繰り広げられる
「僕は無事に逃げられたが、誰かが逃げられない状況に本当に近づいている」とライアン・プリース(RFKレーシング/フォード・マスタング)
スーパースピードウェイで3度目、キャリア通算14勝目を挙げたウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)

 都合10台のクルマが絡んだこのクラッシュにより、レースは延長戦のオーバータイムに突入。総勢15名のドライバーにより56回のリードチェンジを経た勝負は、ハムリン、シンドリック、カスターの対決構図となり、バックストレッチでシンドリックに先行したハムリンに対し、カスターがアウトサイドに振ってから降下。この動きが最終周でのクラッシュを引き起こした。

「フラストレーションが溜まる。ホワイトフラッグをリーダーとして捉えていたんだ」と木曜のデュエル・アット・デイトナ2を制覇していたシンドリック。「リスタートはすべて正しく実行できたと感じたし、最終ステージ3全体もそうだった。今回はトップからクラッシュしなかったのでマシだったが、それでも気分は良くならないね」

 同じく「2号車(シンドリック)を捕捉して、追い抜いた」と語ったハムリンも巻き添えとなり、バイロンに重要なチャンスを与えてしまう。

「どちら側で追い抜くかある程度コントロールできるくらい、彼と長く一緒にいた。41号車(カスター)が追い抜いて行ったが、彼をブロックしないことにした。なぜなら、こういうレースではターン4を無事に抜けて生き残らなければならないが、今回はそれが出来なかった」

 こうして白煙の上がる最終ラップのクラッシュから、トップのハイラインを抜け出したバイロンの24号車が、伝統の“グレート・アメリカン・レース”を2年連続で制覇するデイトナらしい予想外のエンディングとなった。

「ああ、もちろん運もあったけど、最後のラップでは自分の直感を信じたよ」とフィニッシュ直後に明かしたバイロン。

「彼らがボトムの方で不安定になっているように感じたし、正直言って、こちらは6番手あたりからの追い上げだったから、とにかく3番(上段)レーンに行くつもりだった」

「それが僕らに有利に働いたのは明らかに幸運だった。でも、このチームを本当に誇りに思う。1週間ずっと一生懸命に働いて、素晴らしいクルマを持っていた。ただ燃料を節約し、なんとか先頭に留まるのに本当に苦労した。クレイジーだよ、正直信じられない! でも僕たちはここにいる。とても誇りに思う」

 金曜夜に併催されたNASCARクラフツマン・トラック・シリーズの2025年開幕戦『フレッシュ・フロム・フロリダ250』は、アンダーコーション決着でトップチェッカーを受けたパーカー・クリガーマン(ヘンダーソン・モータースポーツ/シボレー・シルバラードRST)の75号車が、レース後の再車検で最低地上高違反を指摘され衝撃の失格処分に。これでコーリー・ハイム(トライコン・ガレージ/トヨタ・タンドラTRD-Pro)がキャリア通算12勝目を手にすることに。

 同じく併催のNASCARエクスフィニティ・シリーズ開幕戦『ユナイテッド・レンタルズ300』は、こちらも背後で大規模な多重事故が発生するワイルドなフィニッシュを制した20歳のジェシー・ラブ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)が、同じくアンダーコーションの延長戦勝負で勝利を飾っている。

「予想していなかった感情が湧いてきた。オーナーとしてこのような立場に立ったことはなく、本当に満足で幸せだ。我々がこれほど強力になったのは、このトヨタがロケットのように速いからだ」と3位のジミー・ジョンソン(レガシ・モーター・クラブ/トヨタ・カムリXSE)
トップチェッカーを受けたパーカー・クリガーマン(ヘンダーソン・モータースポーツ/シボレー・シルバラードRST)の75号車が、レース後の再車検で最低地上高違反を指摘され衝撃の失格処分に
こちらも背後で大規模な多重事故が発生するワイルドなフィニッシュを制した20歳のジェシー・ラブ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)

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