チャンピオン狙う琢磨の高い壁。現役最多勝の“アイスマン”ディクソンの強さとは?
ディクソンが4回もチャンピオンになったのは、マシンをセッティングする能力や、レースを戦う能力に長けているからで、そのうえに彼にはアクシデントでレースを棒に振らない能力もある。
つまらないリタイアをしないよう常に注意を払っている。インディカーでは、序盤にパスできなかった相手でも、必ずレース中に抜くチャンスがくる。その時をじっくり辛抱強く待つことができるのがディクソンだ。
ロード・アメリカでのディクソンは、パワーを抜けないと見るや、燃費セーブにシフト。スピードを維持しつつ燃料消費も抑えるのは難しいが、ディクソンはそれが非常にうまい。
ファースト・スティントの途中で燃費作戦に切り替えた彼は、1回目のピットストップをパワーより1周遅く行うことに決め、それをあっさりと成功させた。
目の前からパワーがいなくなったラップを全開で走り、ピット作業を終えるとパワーの前でのレース復帰を果たした。次のピットでは同じ方法でエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)もパス。シモン・パジェノーはスタートでパスしていたので、残るペンスキー勢はジョセフ・ニューガーデンだけになった。
ニューガーデンを抜けるか。アラバマと同じように抜きあぐねて2位となるのか。ロード・アメリカでのディクソンは、走りながらチームと相談して決定した作戦と少しの運によってニューガーデンもパスした。
相手が硬いブラックタイヤで自分が柔らかいレッドタイヤという状況でのリスタートで、タイヤの温まりの速さを武器として、ターン1でアウトから豪快にパスしてトップに立ったのだ。
前に出たディクソンはレースを完全にコントロール。ゴールまで7周のリスタートでも危なげなくニューガーデンを突き放し、1周で1.5秒の差を突きつけた。コールドタイヤでの速さもディクソンの持つアドバンテージだ。
ディクソンはフォイトに次ぐ歴代2位となる5度目のシリーズチャンピオンシップ獲得を今年達成できるだろうか? チャンピオンに今いちばん近いが、最終戦がダブルポイントなだけに、大逆転でタイトルを取りこぼす可能性も考えられる。
残りレースを見渡すと、ホンダエアロの苦手なショートオーバルが、アイオワとゲートウェイの2レースもある。これらではおそらく表彰台は難しいだろう。
しかし、そういうレースでもディクソンならトップ5フィニッシュとかが期待できる。シーズン序盤のフェニックスでがまさにそうだった。ホンダが不利なコースだったが、キッチリとトップ5でのゴールを達成したのだ。
ミド・オハイオ、ワトキンスグレン、そしてソノマはどうか? 常設ロードコースもシボレー有利だが、今回ロード・アメリカでディクソンは競争力が高いことを証明した。
高速オーバルのポコノはディクソン=ホンダが有利のはず。確実にシボレー勢より上位でポイントを稼ぐことが必要になる。
不利なコースでもトップ5で成績を残すことができれば、例えチャンピオンの座を争う相手が上位でゴールしても、ポイント差の拡大を小さく抑えることができる。ディクソンはそういう戦いに慣れている。
ダブルポイントのソノマを迎える前にポイントリードをできる限り大きくしておきたい。ソノマはディクソンが2勝しているコースだが、チームペンスキーも負けじと速いコース。今年もそこでの最終戦が終わるまで、かなりもつれた戦いが繰り広げられることとなりそうだ。
ディクソンとペンスキー勢だけでなく、そこには佐藤琢磨、そしてグラハム・レイホールも絡めば非常にエキサイティングなシーズン最終戦となるだろう。