フォーミュラEは、バッテリーの限られたエネルギーをいつ、どのように使うのかがレースの勝負の分かれ目となる。テスト走行もできず、いきなりワンデー開催の走行初日の決勝でチームの指示なしにペース配分を考えることは、ルーキーの可夢偉には不可能なことだった。
「リメイニング(残りの周回に合わせた出力設定)を変えないといけないんですけど、その情報もチームから届かなくて、ずっと違うターゲットで走っていました。他の人より2周くらい多いレースの設定で走っていた」
「最後、バッテリーがたくさん余って、残り5周くらいでチームから『全開で行っていいよ』と。そのときにベストタイムをマークしましたが、それでも最後はバッテリーが余っていました。結局、どれだけの周回行けたんだというレベルの話です。実際、そこらへんはもう少し経験があると対処できたと思うんですけど、モニターに表示されている指示どおりに走ったらバッテリーが腐るほど余ってしまいました」
そのため、せっかく全体の29パーセントというぶっちぎりの投票数(2位が13パーセント)で獲得したファンブーストも、残念ながら可夢偉は使うことがなかった。
「ファンブーストに選ばれたこともレース中は知らなかった。あの展開なら使う場面もなかったのですけど、ファンブーストの前に、きちんとエネルギーを使えという話ですよね。経験がなくて初めて走るのに無線が壊れて動いていないと、こういう結果になるのは仕方ないですね」
