「アンダーステアの度合いは変わりませんが、フロントがしっかりと支持されるようになった結果、よりブレーキングを攻め込むことができ、安定するようになりました。おかげで僕たちは速くなりました。これはマシーンのパフォーマンスとサーキット環境のコンビネーションによるものであり、フロントのライドハイトをどうコントロールするかに関わることです」 最後のプラクティスで琢磨はトップとわずか0.145秒差で6番手となる。状況は好転し始めたのだ。

 レースが始まると、序盤にしていくつかのイエローが提示されたため、琢磨は16番手に浮上。さらにグリーン中にアレクサンダー・ロッシをオーバーテイクして15番手へと駒を進める。「この種のコースでは、長いサバイバルレースになることが往々にしてあります。85ラップのレース中、フルコーションは平均して20ラップにもなるのです! だから、もしもポジションを上げるチャンスがあれば素晴らしいことですが、かりにそうでなかったとしても心配する必要はありません」

 プライマリーのブラックタイアでスタートした琢磨は、続くふたつのスティントを柔らかめのレッドタイアで走行する予定だったが、通常とは異なる試みによって状況をさらに改善することを目指し、早めにピットストップする戦略が検討された。そしてピットストップの際にレッドタイアを装着したところ、ラップタイムが向上する。これが45ラップ目にイエローが提示される前のことだった。「ここが分岐点となりました。レースの残りは40ラップ、ただし1度に給油できる燃料の量は最大でも30ラップ分しかありません。したがって40ラップの連続走行は現実的ではありませんが、途中でイエローが提示されれば可能になるかもしれません。それは試してみる価値のあるギャンブルでした」

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