インディ:ショートオーバル初レースで見えた新エアロ適応力。琢磨のRLLRは苦戦中
新しいユニバーサルエアロキットでもっとも苦労しているのは、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(RLLR)だ。2月のテストで彼らは最速だった。
ここ数年、ホンダのベスト・チームとして戦って来ている彼らは、グラハム・レイホールひとりの体制から佐藤琢磨を迎えた2カー体制となり、優勝とチャンピオンシップを争う強豪の一角になることを目指しているが、掴んでいるかに見えていた新エアロでアドバンテージは、レースウイークエンドには蒸発してしまっていた。
レースウイーク最初のプラクティス1ではレイホールが17番手、佐藤琢磨が18番手と低迷。全チームが同じ空力パッケージを使う状況ではコンディションの変化への対応力も試されるが、今回のRLLRはその点でライバルたちに大きく遅れを取っていたということだ。
予選に向けてはセッティングの進歩がなされ、レイホール12番手、琢磨は13番手までポジション・アップ。しかし、レースで更にパフォーマンスを上げることは叶わず、レイホール9位、琢磨も11位という結果に終わった。
アンドレッティ・オートスポートも新エアロへの適合をうまく進めているチームのひとつだ。ライアン・ハンター-レイがリーダーシップを発揮し、アレクサンダー・ロッシが先輩を凌ぐスピードを見せるというパターンでトップグループにふたりが食い込んでいる。
一昨年から去年にかけてエンジニアの布陣にテコ入れをした彼らは新エアロへの対応がうまくいっている。マルコ・アンドレッティの苦戦が依然として続いているのは、今回もそうだったが、なぜか彼のマシンだけがメカニカルトラブルに襲われることによる。
昨年とはメカニックの顔ぶれも変わっているのに、マルコは不運から逃れられずにいる。グリップの低い新エアロのマシンはコントロール能力に優れる彼にマッチしているはずで、今後のレースでは久々の好走が期待できる。
また、今回のロッシの速さは衝撃的ですらあった。レースのほぼ全体を通して最速の存在で、自力で周回遅れを取り戻して見せた。近頃のインディカーではなかなか実現できないことだ。
マシンが最高の仕上がりとなっていたのは間違いないが、インディカー3年目を迎えるロッシはますます速さに磨きがかかっている。昨年、ワトキンスグレンで圧勝をした時と同じ、ライバル全員を明らかに上回るスピードがフェニックスでのロッシには備わっており、相手との距離を見極めてタイミングを緻密に計り、一気に抜き去っていた。
自信と勇気に満ち溢れた走りだった。1回目のピットでのミスがなければ、彼が周回遅れの山を築いて優勝していた可能性が高い。
フェニックスのショートオーバルは少々特殊なキャラクターの持ち主だ。アイオワとゲートウェイのコースはコーナー半径が小さいため、バンクの角度はフェニックスとほとんど変わらないがグリップは断然高い。
それらのコースでは今回とはまったく異なるバトルが繰り広げられることになるため、今回速かったチームが同じようにアドバンテージを持っているとは限らない。
今週末の第3戦はストリートのロングビーチ。セントピーターズバーグで速かった面々が同じように速いのかに注目したい。