27周目、残り3周でピットイン。ここでスーパーソフトに履き替えてピットアウトすると、マルケロフの前でコースに復帰。燃料が軽くなったマシンで3周走るだけだから、スーパーソフトのデグラデーションもさほど心配はなく、牧野はマルケロフ以下を寄せ付けることなくそのままトップでコントロールラインを駆け抜けた。
「エンジニアがポジションを言うときと言わないときがあるんですけど、今回は全然言わなかったんです。僕も別に聞く必要はないと思って、自分の走りに集中してペースをコントロールして走っていました」
「前にプライム(ミディアム)を履いているクルマはいないって言われていたので、ステイアウトしている中で一番前を走っているのは分かっていました。でも後ろとのギャップが分からなかったんで、実質的に何位なのかが分からなかったんです」
「僕としてはリバースグリッド(の対象になる8位以内)に行けたら良いなくらいに思っていて。ピットアウトしてなんでマルケロフが後ろにいるのかなと思って最終ラップに『何番なの?』って順位を聞いたんです」
信じられない気持ちのままでフィニッシュした牧野は、ウイニングランで「見たか、コラァ!」と絶叫した。批判の声に対する、牧野なりの回答だった。

レース2でもペースは良かったが、ターン1手前の路面のうねりに「ブレーキングのタイミングとバンプ(を乗り越えるタイミング)がちょうど合ってしまって、その後はブレーキを抜いてもタイヤの回転が戻らなくてロックしたままずっと行ってしまった」
これで完全にタイヤが壊れ、バイブレーションが酷くピットインを余儀なくされた。右フロントだけを前日のレース1で27周走ったタイヤに交換して走り、前走車に追い付くことはできなかったがペースは上位勢と匹敵する速さだった。
「あのまま走れていれば、表彰台に乗れるか乗れないかっていうところだったと思います。そのくらいクルマのフィーリングは悪くなかったですね。(右フロントタイヤが古いので)左コーナーだけはさすがに曲がらなかったですけどね」
「2つめのシケインとアスカリだけはすごくアンダーステアでしたけど、その割にはペースは良かったですね」
勿体なかったが、「落ち込んでいない」と牧野は言う。そのくらい、このモンツァの週末で得られた手応えは大きなものだったからだ。これまで苦しんできたタイヤマネージメントについて、シルバーストンあたりから見え始めた光明がいよいよ明確な手応えになりつつある。
「何かはっきりとこれというのはありませんけど、今までと比べるとクルマを自分でコントロールできているという感覚と手応えがありました。例えばブレーキングにしても今までは不安を抱えながらしていたのが今回は自信を持って攻めていけました」
「今回に関して言えば、自分の感覚にクルマが合っていた。そういうところが大きいと思います」
