更新日: 2019.07.11 20:01
ストラテジストとエンジニア。インディカーで勝つために必要なチーム力
インディカーで成功するには優秀なエンジニアが不可欠。そして、エンジニアとドライバーは相性も重要となる。パワーのエンジニアはもうずーっとデイビッド・ファウスティーノが勤めている。
それに対してニューガーデンは、まだペンスキー入りして4年目だが、今のエンジニアは、F1のレッドブルから2018年シーズンを前に移籍して来たギャビン・ウォード。2018年のシーズン半ばから担当が変わっている。
シモン・パジェノーはシュミット・ピーターソン・モータースポーツ在籍時代からコンビを組んでいるベン・ブレッツマンというエンジニアと一緒にペンスキーに移籍。彼の実兄エリックはアンドレッティ・オートスポートのテクニカル・ディレクター。その前はチップ・ガナッシ・レーシングでスコット・ディクソン担当エンジニアだった。
パジェノーとブレッツマンのコンビは今年ついにインディ500制覇を成し遂げた。
ニューガーデンはエド・カーペンター・レーシング(ECR)からエンジニアを同行させなかった。ECRでニューガーデンと共に3勝を挙げたのはジェレミー・ミレス。彼はニューガーデンがいなくなるとアンドレッティ・オートスポートに引っ越し、アレクサンダー・ロッシ担当となった。
ロッシとインディ500優勝を果たしたトム・ジャーマンはレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(=RLLR)がテクニカル・ディレクターの座を用意して引っこ抜いたからだ。
RLLRはジャーマンが昨年はグラハム・レイホール担当だったが、今年はそこにアレン・マクドナルドを雇い入れ、ジャーマンはディレクターとして2台両方を見る体制になっている。
マクドナルドはシュミット・ピーターソン・モータースポーツ、ファスト・レーシング、エド・カーペンター・レーシングでインディ500ポールポジションを合計4回も獲得させた、F1経験もあるイギリス人エンジニアで、アンドレッティ・オートスポート在籍時にはインディ500での優勝も複数回記録している。
グラハムは新しもの好きなようで、琢磨が入って来る前はエディ・ジョーンズが彼の担当で、琢磨を迎えた2018年はジャーマン、今年はマクドナルドをレースエンジニアにしている。
琢磨はRLLR入り以来ジョーンズとのコンビで戦っている。ジョーンズは元レーサーで、レーシングマシンの設計も行っていたがエンジニアに転身した。
過去を振り返ると、チーム・グリーンのインディライツで服部尚貴を担当していた。そういえば、RLLRで昨年までダンパー・プログラムを仕切っていたマーティン・パレは、ウォーカー・レーシングで中野信治担当だった。
ジョーンズと琢磨のコンビネーションは非常に良い。勤勉な琢磨は時間がかかってもデータを深く分析し、マシンを少しでも良くしようとする。ジョーンズはそれにとことん付き合う。
琢磨とインディ500優勝を飾ったギャレット・マザーセッドは、KVレーシング・テクノロジー時代には早仕舞いをして琢磨に不満を抱かせることもあったが、アンドレッティ・オートスポートで再びコンビを組むと、その時には琢磨流を受け入れ、マシンを良くするべく長いミーティングも厭わなくなった。彼は現在もアンドレッティ・オートスポートに在籍し、ザック・ビーチについている。
琢磨とジョーンズは2シーズン目を迎え、さらに関係を強化。プラクティス1、プラクティス2でマシンが仕上がり切らない時に予選で上位に食い込むなど、大逆転を実現して来ている。
つい最近のロードアメリカでもそういう光景は見られた。ここ数戦は結果が出せていないが、琢磨陣営には残りシーズンで複数勝利を記録する実力が備わっている。
琢磨とジョーンズのコンビネーションが良いだけでなく、グラハム、ジャーマン、マクドナルドまでを含めたエンジニアリング・スタッフ全体の総合力が昨年までよりワンステップもツーステップも上昇しているからだ。
RLLRの作戦部門は、グラハムのピットがリカルド・ノールト(RLL生粋のスタッフ。バディ・ライスがインディ500で優勝した時のクルーチーフ)。琢磨のピットではデレック・デイビッドソンが作戦をコールしている。
総合力を上げているRLLR。シリーズ後半戦でその力を発揮できるのか注目だ。