それでも冷静に、辛抱強くチャンスを待つことを決意。低い気温と路面温度となったコンディションでのセッティング調整をしながら、燃費セーブも心がけて周回し、レースが後半戦になってからスピードアップを果たした。

 248周のレースの188周目、琢磨はトップに躍り出た。4ストップ作戦が当たり、この時点でリードラップにいたのは上位4台だけ。ピット作業を終えても琢磨はトップを維持できた。

 最後のグリーンフラッグは205周目。琢磨の後ろはトニー・カナーン(AJフォイト・エンタープライゼス)、エド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)というふたりのベテランで、その後ろにはポイントリーダーのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)、ポイント2番手のアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)、今回驚くべき速さを見せ、97周をリードしたルーキーのサンティーノ・フェルッチ(デイル・コイン・レーシング)がつけていた。

 残り50周を切ってのリスタートで、琢磨は非常に落ち着いていた。リスタートが得意なカナーンを警戒してのダッシュを成功させると一気にリードを広げた。ところが、そのカナーンを残り5周でパスしたカーペンターがグイグイと差を縮めてくる。勢いなら完全にカーペンター。そう見えていた。

オーバルのみの参戦のため今季ラストレースとなったエド・カーペンター
オーバルのみの参戦のため今季ラストレースとなったエド・カーペンター

 それでも琢磨は冷静で、テール・トゥ・ノーズで迎えた最終ラップでも絶妙のライン採りでトップを堅持。最後のターン4からの立ち上がりでカーペンターは最後の力を振り絞ってアウト側から逆転を狙ったが、半車身届かず! 0.0399秒という僅差で琢磨がウイナーとなった。

 ショートオーバルでの優勝、1シーズン複数回優勝はどちらも日本人初。またしても佐藤琢磨が快挙をやってのけた。しかも、来週の第16戦は昨年琢磨が優勝したポートランドだ。

コックピットでガッツポーズを見せる佐藤琢磨
コックピットでガッツポーズを見せる佐藤琢磨

「映像などの情報が限られていたことで、正しい判断をしてもらえない状況になっていました。それでチームはデータをチェックし、自分がライン変更をしなかったことを示すステイトメントを出してくれました。レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは全面的に私を支持してくれました。本当に感謝しています」

「チームは一体感を改めて強くし、ゲートウェイに向かいました。スタートで大きく遅れ、周回遅れになりました。序盤のマシンはタービュランスの中でハンドリングが良くなかった」

「しかし、2スティントを走って様子を見た後にセッティングを調整し、最後のピットストップの前に非常い速いペースを保ち続けることができました。リードラップへの復活を目指して戦い続け、それを実現した後にはフルコースコーションのタイミングの味方もあって、ピットストップをしてもリードラップ、そしてトップを守ることができました」

「コース上からスコアリングパイロンを見ると自分がトップで、チームに聞いても自分がトップだという答えが返って来ましたが、すぐには信じることができませんでした。しかし、自分たちがトップだとわかり、もうピットストップをしなくてもいい周回数しか残っていない状況になりました」

「トラフィックの中ばかりを走っていたマシンは、先頭を走ることでリヤタイヤへの負担を大きくし、ゴールが近づいてから大きくペースを落とすことになりました。しかし、こうして優勝することができ、本当に嬉しいです」と琢磨は話した。

 厳しい状況を乗り越えての優勝。クリーンに、そしてスマートに戦い抜いて最高の結果を獲得したことで、琢磨を非難する声は消えていくことになるだろう。

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