宮園はなんとしてでもヒザルに食らいついていかねばならないところだったがヒザルは冷静に安定したペースで飛ばす。そして7周目、宮園はわずかにミスをしてヒザルとの間隔は開いてしまった。
ラトコフスキーは8周目でタイヤをミディアムへ交換、ヒザルと宮園は9周目にミディアムへ交換したが、宮園は給油をせずヒザルの前へ出る思い切った作戦を採り、ヒザルは順当に給油をして宮園の後でレースに復帰した。ラトコフスキーは1周で再びピットイン、ハードタイヤを捨ててミディアムタイヤに交換する作戦に出た。
宮園はトップで逃げる。ガス欠覚悟の身軽な状態でヒザルを突き放しておかなければならないところだが、ヒザルは冷静な走りでペースを守り、宮園との間隔を維持する。周回を重ねる毎に、状況はヒザル有利に傾いていった。
12周目、3番手のラトコフスキーはピットイン、もう一度ソフトタイヤを履き直し給油を行った。リスクはあるが、安定したペースで格闘する宮園とヒザルを逆転するために必要な奇策だった。コースに復帰したラトコフスキーはファステストラップを記録しながら猛然と追い上げを始めた。
15周を走り終え、宮園はガス欠寸前の状態でピットイン、ハードタイヤへ交換して給油を行った。この間にヒザルがトップに立った。宮園は18秒遅れでコースに戻ったが、むしろソフトタイヤで追い上げる背後のラトコフスキーを意識しなければならない状況だった。
17周終えてヒザルはピットイン、ハードタイヤへ交換するとともに少量の給油を行って宮園の6秒前でコースに復帰した。勝負がついた瞬間だった。その後、ヒザル、宮園、ラトコフスキーの間隔は少しずつ縮まっていったがヒザルはまったく動ずることなくペースを守り、トップのまま20周を走りきってフィニッシュした。4秒7差で宮園が2位、さらに2秒1置いてラトコフスキーがレースを終えた。

念願のワールドツァー初優勝を遂げたヒザルは、フィニッシュの瞬間、喜びをかみしめるような表情を見せた。今回は足の指を骨折するケガを押しての出場で、シューズを履かず足の痛みを避けてペダルを操作しながらの完勝だった。ニューヨークで表彰台を逃した宮園にとっては初めての表彰台。ラトコフスキーはニューヨークでのミスを反省したのか、大人しいレース運びだった。
なお前日に開催されたマニュファクチャラーシリーズ決勝では、アウディが速さを見せたが戦略のミスで順位を落とし、ニューヨーク大会に続いてメルセデスが2連勝を遂げた。2位にポルシェ、3位にはスターティンググリッド8番手から戦略を当てたトヨタが入賞した。

ワールドツァー第5戦は東京モーターショーの会場で10月26日~27日に開催される。