國分はすぐ背後に食らいつくカラッツァを意識しすぎたかなんと4輪脱輪のミスを犯しペナルティを受けてしまう。ユノディエールで減速ペナルティを消化する間にカラッツァがトップを奪い、勝負はあったかに見えた。
國分はからくも2番手を守るがすぐ背後にロペスが迫る。國分とロペスが牽制しあう間に、例によってラトコフスキーと宮園がじりじりと近づいてきた。
7周目が終わるシケインで場内を沸かせる場面が訪れた。ロペスとラトコフスキーが交錯しスピードが落ちている間に、ソフトタイヤを履く宮園がアウトから一気にロペスとラトコフスキーをかわして3番手に進出したのだ。ファイナルラップに入った時点でトップはカラッツァ、1秒7後方に國分、さらに4秒2置いて宮園が続く。
トップを走るカラッツァはプレッシャーに負けたかテルトル・ルージュで4輪脱輪のミスを犯す。ユノディエールで國分は一気にカラッツァとの間隔を縮めトップに立った。しかしカラッツァはあきらめず國分の背後につけてスリップストリームを使うとミュルサンヌの飛び込みで國分に迫りまたもやトップを奪い返した。勝負はついたかに見えた。
ところが國分はあきらめずカラッツァに食らいつきインディアナポリスへ向けてスリップストリームに入るとカラッツァに襲いかかり自分のスペースをこじ開けてトップに立った。カラッツァは動揺したかアルナージュでオーバーラン。それでも力を振り絞り國分を追った。國分にはもう燃料が残っておらずカラッツァを突き放す余力がなかったのだ。
カラッツァはフォードシケインで最後の勝負に出て國分のアウト側へ飛び込んだ。しかし國分も最後の力を振り絞ってこれを封じこめ、ギリギリの状況でフィニッシュラインを駆け抜けた。日本選手として初めてワールドツアーを制した瞬間だった。



各選手たちがシートに座り続ける國分に飛びついた。これまで、その速さは認められながら予選でミスを繰り返してきた國分がついに勝った。國分は国籍を超えた祝福に包まれたのである。2位にはカラッツァ。國分もカラッツァもフィニッシュしたときには燃料が空の状態だった。すべてを出し尽くしたワールドツアー史に刻まれる名勝負であった。



