世界で活躍する日本人の女性ドライバーとして名前を挙げるとすれば、小山美姫だろう。2019年、小山は日本でFIA-F4選手権に参戦しランキング17位だったが、彼女は上述のチャドウィックと同様にWシリーズにも参戦した。
Wシリーズ開幕戦の予選では17位と大きく出遅れるも、決勝レースで巻き返しを見せた小山は7位入賞を果たし、ファステストラップも記録した。続く第2戦ゾルダーでも8位に入賞すると、第3戦ミサノでは2019年シーズンのベストリザルトとなる4位に入り、最終的にはランキング7位につけ2020年シーズンのシートを確保した。

Wシリーズ初参戦を終えた小山は、日本でイベントに出席した際、Wシリーズが開催されるすべてのサーキットにおいて走行経験がなかったため、自信を持てなかったと明かしていたが、2019年に学んだことを2020年に活かしたいと意気込んでいた。
将来的な目標としては女性ドライバーをF1に送り出すことを目指しているWシリーズだが、その一方で一部の女性ドライバーらはこのシリーズに対して疑問を抱いている。
とはいえスポンサーマネーの持ち込みを必要とせず、金銭面というひとつの不安要素を打ち消したこのシリーズを足がかりにステップアップすることを望んでいるドライバーも数多くいる。そのひとりである小山は、2019年の学んだことを糧に、2020年はどのような活躍を見せてくれるだろうか。



■タチアナ・カルデロン:F1テストドライバーを務め、F2カテゴリー史上初の女性ドライバーに
最後は、2019年シーズンはFIA-F2を戦ったコロンビア人のタチアナ・カルデロンだ。
2013年からFIAヨーロピアンF3選手権を3シーズン戦ったカルデロンは、2016年から2018年までGP3(現在のFIA-F3)に参戦。そして2019年にはFIA-F2に参戦し、前身のGP2時代を含めて、初めてこのカテゴリーに参戦した女性ドライバーとなった。
GP3初年度をアーデン・インターナショナルから戦ったカルデロンは、2019年にそのアーデンに復帰し、BWTアーデンからF2に参戦。しかし厳しい戦いが続き、一度も入賞できずにシーズンを終えることになった。

一方F1では2017年よりザウバーF1チームの開発ドライバーに就任し、2018年(アルファロメオ・ザウバー)と2019年(アルファロメオF1チーム)はテストドライバーを務めてた。カルデロンには、フィルミングデーを利用して2018年にF1マシンを走らせた経験がある。この当時、女性ドライバーがF1マシンをドライブしたのは3年ぶりのことだった。
2020年はメルセデスの参加であるHWAがアーデンを買収し、ドライバーにジュリアーノ・アレジとアーテム・マルケロフを起用することがすでに決まっている。F2におけるカルデロンのシート探しは難航しているようで、アメリカでのレースや耐久レースも視野に入れている。2020年に1月にはデイトナ24時間レースに出場予定だ。


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今回紹介したのは4人とごく僅かだが、モータースポーツに詳しい方なら一度は名前を聞いたことがある選手ばかりだろう。また今回は触れなかったものの国内でも、全日本F3選手権を戦っている三浦愛を筆頭に、2019年のスーパーFJで勝利を手にした村松日向子、下野璃央など数多くの女性レーサーが活躍している。
まだモータースポーツに触れて日が浅い方も、今後彼女たちや彼女たちが戦うカテゴリーにぜひ目を向けてみてほしい。
もちろんモータースポーツ界で活躍している女性は選手だけではない。チーム代表やエンジニアとして働くスタッフも増えている。元レーシングドライバーのスージー・ウォルフや、2019年のF1第20戦ブラジルGPで表彰台に上がったハンナ・シュミッツがいい例だ。国内でも、autosport webでも話を聞いた水村リアさんをはじめ、多くの女性スタッフが活躍している。
今後、モータースポーツ界で活躍する女性ドライバーやライダー、スタッフは増えていくことは間違いない。