残り9周でリスタートを迎え、誰よりもフレッシュなラバーを装着するSVGは猛チャージを開始し、最初のラップでクルサードとウォーターズを仕留め、続く周回でホールズワースもオーバーテイクしてみせる。

 わずか3周で僚友ウインカップに次ぐ3番手まで上がってきたSVGの勢いに対し、トップチームらしく戦略的にポジションを入れ替えたTriple Eightの2台が、シリーズ連覇中の王者マクラフランの背後へ。

 レース序盤の8周目に交換したタイヤがグリップダウンの兆候を見せていたマクラフランに対し、マシンを両サイドのウォールに擦り付けるようにコース幅一杯を使って追随したSVGがテール・トゥ・ノーズに持ち込むと、長い右コーナーからのビッグブレーキとなるターン11でインサイドへ。

 ライバルのダイブに為す術のないマクラフランは、ラインを塞がれるようにアウトへはらむと、SVGの97号車に続いてクリッピングへと入ってきた選手権ライバルのウインカップにも先行を許し3番手へと陥落。そのままTriple Eightが完璧なチームプレーで劇的なワン・ツーフィニッシュをもぎ取った。

 レース後、このバトルについて聞かれたマクラフランは、宿敵に対し「バカげたゲームを始めるには、少し早すぎるんじゃないか」と、敗れた悔しさを抱えつつ苦言を呈した。

「もちろん、序盤にタイヤ交換をした僕にシェーン(SVG)を抑えるペースがないことは理解していた。でも、ジェイミー(ウインカップ)とは話が別だ。彼とはコース上で勝負したかった」と続けるマクラフラン。

「僕の目にもそれは素晴らしい戦略に見えたけど、チームメイトがタイトル争いを助けるのはまだ早すぎるんじゃないかな。もちろん、スポーツマンシップに同意するかどうかに関わらず、それができるのがトップチームだけどね」

 一方、おなじくレース後会見で問われたSVGも、前年度の『バサースト1000』でDJR陣営が採用した戦略を引き合いに出し、現王者を牽制する言葉を残した。

「彼が何を言ったかはよく知らないが、あのときのマスタングに“デブリを踏ませてやる”必要さえないことは明らかだった。僕にとってはフェアなパスだった」

 一方、143点差でマクラフランを追う選手権2位のウインカップも「それこそ、チームが2台のマシンで戦う理由じゃないのか?」と続ける。

「両方のマシンに(おなじ)性能があり、両方のマシンに(おなじ)機会がある。それをどう使うかが戦略であり、レーシングチームの存在理由だろう?」

 これで第8戦までを消化したVASCは、9月19~20日、9月26~27日の“ザ・ベンド”ことベンド・モータースポーツパークでのスーパースプリント2連戦を開催し、10月15~18日にはいよいよシリーズ最大の祭典である『バサースト1000』で2020年のフィナーレを迎える。

レース3の集団バトルでは、SVGにテールを突かれスピンしていたキャメロン・ウォーターズ。レース後に「あれはペナルティもの」と憤慨
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レース3では老獪なチーム戦術でワン・ツーを手にし、トップチームたる由縁を披露したTriple Eight Race Engineering
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スコット・マクラフランの『不満』は牽制の意味が強いが、残る3戦。タイトルに向けた精神戦が始まっている
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