そして運命の最終レース3は、リバースポール発進のクリス・スマイリー(ヒュンダイi30 ファストバック Nパフォーマンス/エクセルラー8・モータースポーツ)がシグナルグリーンと同時に続々と後方集団に飲み込まれ、代わってモーターベース・パフォーマンスのオリー・ジャクソン(フォード・フォーカスST)とメルセデスのモーガンが激しい首位攻防を繰り広げる。
軽いコンタクトを繰り返しながらアウトサイドのラインから首位浮上に成功したジャクソンは、その後もメルセデスの封じ込めに全力を注ぐ展開が続いていき、迎えた最終ラップに思わぬドラマが発生する。
メルセデスの背後3番手を走っていたブッチャーのテールにカローラのイングラムが迫り、再三のフェイントで仕掛けのタイミングを伺うと、最終手前の右ロングコーナー“Coram(コーラム)”を横並びで回った2台は、アウトサイドのフォードがトラックからわずかに外れ、カローラが先行して最終の左90度コーナー“Murrays(マーレイズ)”のブレーキングに入っていく。
すると、グラスエリアから復帰して速度を殺しきれなかったブッチャーのフォーカスSTが、左へターンインを開始していたカローラのボディサイドに激しくヒット。そのままカローラは霧揉み状態でスピンオフし、2台ともにランオフへと弾き出されると、なんとかコース復帰したブッチャーは5位、イングラムも8位までポジションを落としてフィニッシュラインへ。
これで自身初勝利のシルバーストンからキャリア2勝目を飾ったジャクソンと、2位モーガンに続いて、3位ポディウムにはまさに漁夫の利を得たBMWのターキントンが入り、4位にサットンが続くリザルトに。これで大量ポイントを失ったイングラム、ブッチャーともに、続く最終戦でのタイトル挑戦に黄色信号が灯るアクシデントとなった。
「本当に残念で、可能ならこうしたアクシデントは回避したかった」と、状況を振り返ったブッチャー。
「お互いコンタクトを繰り返しながらコーラムを回り、僕は外側で続く最終への位置取りを考えていたが、グラスエリアに押しやられ、そこからは“乗客”になった。コースに戻って彼にヒットしたくはなかったが、どうにもできなかったんだ」
一方のイングラムも「彼が強制的に僕を撃墜したように映像では見えるだろうが、そうではない」と、バトルの末の結末だったことを強調した。
「9番手発進から4番手まで進出し、クルマはとても速かった。ロリーに近づき、ファイナルラップではパッシングを浴びせながら追いかけたんだ。これで少しエキサイトしたかもしれないね」と続けるイングラム。
「コーラム突入でもう一度ライトをフラッシュさせ、彼のフォーカスがスライドしていくのが見えた。僕はまだそこで動く気はなく最終立ち上がりでのクロスラインを狙っていたけど、ギャップを詰めて空いたインサイドに入った。その時点で彼のフォードは僕の左後ろの位置になり……あとはご覧のとおりさ」
これでポイントリーダーのターキントンに対し9点差でサットン、25点差でカミッシュが続き、数字上の権利を残すイングラムは34点、ブッチャーは63点後方に。2020年シーズンフィナーレのBTCC第9戦は、11月14~15日にブランズハッチのインディ・サーキットで争われる。


