しかしこの日のバリチェロはレースペースでも敵はなく、12周目にはそのリードを4秒近くにまで拡大。その背後では、隣国の英雄をアシストしようとTGR陣営のスピードスター、ジュリアン・サンテロ(トヨタ・カローラSTC2000/TOYOTA GAZOO Racing YPF・インフィニア)が3番手に上がってくる。
すると14周目からバリチェロを除く背後のバトルが動き出し、ポジション争いが激化。その中心を担ったのがシボレーYPFチームのベルナルド・レイバー(シボレーYPFクルーズ)で、サンテロのカローラにボディをコツコツとヒットしてラインを作り表彰台圏内へ。そのバトルに乗じてレイバーと同じマシンに乗る2016年王者アグスティン・カナピノ(シボレーYPFクルーズ)もサンテロを退け、2台のシボレーが2番手ミラの追撃に入る。
さらに後方からはトヨタのエース、ロッシがジリジリと順位を回復し、ペーニャとはコース全周、エアロパーツが飛ぶほどの肉弾戦を展開し、サイドウェイ状態に陥った1号車フルーエンスGTとあわやTボーンという際どい勝負に。この勝負でともにコースオフを喫しながらも、トヨタのロッシが前に出ることに成功する。
その前方2番手争いも、ミラ、サンテロ、そしてレイバーが順位を入れ替えながら“コンタクト上等”のエキサイトした状態へ発展し、ミラは再三にわたり突かれた影響でリヤバンパー飛ばしながらもポジションを死守していく。
そこへシボレーのカナピノが加わり4WAYバトルになると、一瞬の隙を突いた巧者カナピノが前へ。一方、レイバーに後方からヒットされたミラは1コーナーでスピンを喫し、ここで勝負から脱落してしまう。
さらにロッシ、サンテロのトヨタ勢に対し必死のディフェンスを展開したレイバーは、マシンを振った際にロッシをコース外へと押しやりカローラはグラスエリアを滑走。なんとかコントロールを保って復帰したロッシだったが、直後にリカルド・リサッティ(トヨタ・カローラSTC2000/ミーダス・カレラ・チーム)とルノーのミラが高速最終コーナーで接触し、ルノーがバリアに激突。
このアクシデントでセーフティカーが出され、直前のコースオフの際に負ったダメージの影響で、スローダウンしていたロッシのカローラはこのタイミングでピットへ戻り、そのままリタイアとなってしまう。
残り1ラップのファイナルスプリントで再開されたレースは、バリチェロが盤石のリスタートで首位を堅守。2番手モスカルディーニに仕掛けたカナピノが最後の最後でオーバーテイクに成功し、貴重な選手権ポイントを加算。88点の首位ロッシに対し75点とその差を詰め、4位に続いたレイバーは「危険なドライビング行為」として多くのアクシデントの起因になったと判定され、失格処分が下された。
続く12月5~6日の週末にもここブエノスアイレスでふたたびのダブルヘッダー戦として2020年STC2000第6戦が開催され、それ以降の開催地は追ってアナウンスされる見込みとなっている。


