「自動車業界における電動化推進の機運はますます高まっており、モータースポーツとその産業界もそこに関与し貢献したいと考えている。この分野ではますます多くの競争が起こっているからね」と語るのは、FIAでテクニカルディレクター職に就く、元シトロエン・レーシングのクサビエ・メステラン・ピノン。
「おもな技術的課題は、バッテリー開発と車両への統合、そして急速充電技術になる。これは標準コンポーネントや共通キットに依存するのではなく、電動モビリティ関連の技術を開発したいメーカーにとって非常に重要なポイントだ」と続けたピノン。
「それゆえ、既存のGT3プラットフォームを活用し、この新技術規則に適応することで確実なコスト管理ができるようになるはずだ」
そして元アウディスポーツでトラックエンジニアとして活躍し、現在はFIAのGTコミッション代表を務めるリーナ・ゲイドも、この新たな電動GTレギュレーションが、今後もICE搭載のGT3規定と「共存していくことになる」との展望を示した。
「現在、高性能なエレクトリック・スーパーカーの市場は絶えず成長を続けており、メーカーが自社の技術を開発してアピールすることができるプラットフォームの整備が喫緊の課題になっていた」と語ったゲイド。
「そのため、これら技術規制の作成は過去18カ月間のFIA GTコミッションにとって重要なプロジェクトであり、私たちはテクニカルワーキンググループを通じてGTメーカーと定期的に話し合いを続けてきました」
「彼らもこの新しいカテゴリーに強い関心を示しており、その部分では手応えを得ている。その一方で、FIAのGTポートフォリオを拡大しつつ、この電動GTは既存のGT3と共存することになる。当面のあいだ、GT3は世界中のカスタマーレーシング市場の焦点であり続けるでしょう」
この新規定を採用したグローバルチャンピオンシップは、本来2021年初頭にも発表される計画だった新規プロモーターのもと、常設サーキットでの開催が予定されており、充電設備は各会場に応じて既存のもの、もしくは一時的なインフラストラクチャを活用することを目指している。
最終的な技術規則とチャンピオンシップの名称は後日発表される予定で、2023年の始動を目指して今後もカレンダー策定が続けられる。
「FIAのビジョンは、モータースポーツを持続可能なモビリティのための実験室にすることだ」と付け加えたのは、FIA会長のジャン・トッド。
「この新しい電動GTカテゴリーの発表は、最新のバッテリー技術と急速充電の開発に道を開くべく、成長するこの分野の目標達成を助ける重要なマイルストーンになる。我々の“Race-to-Road”アプローチの姿勢を示す、完璧な実例となるだろう」

