「どのコーナーでも通常コンマ数秒を削るのは至難の技なんだけど、正直に言って今回のQ3でのフライングラップは完璧に近かった」と満足げな表情を浮かべたエルラシェール。「最も重要かつ難しい精神状態のQ3で、そのドライビングができたことを誇りに思うよ。10点が獲得できたのも非常に良いことだね!」
明けた日曜10時15分に開始されたレース1は、予選トップ10リバースポール発進のウルティアが、一旦は予選9番手でフロントロウに並んだエステバン・グエリエリ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/ALL-INKL.DE・ミュニッヒ・モータースポーツ)に先行を許すものの、オープニングの最終コーナーで再び捉えて以降は、背後を振り返ることなくチェッカーまで快走。同じく10周目の最終コーナーアウト側からグエリエリを仕留めたトム・コロネル(アウディRS3 LMS/コムトゥユー・チーム・アウディスポーツ)が2位に続き、グエリエリがなんとか3位表彰台を死守して、14周のフィニッシュを迎える結果となった。
続いて現選手権リーダー兼ディフェンディングチャンピオンを先頭に、12時15分にスタートが切られたレース2は、テッド・ビョーク(リンク&コー03 TCR/シアン・パフォーマンス・リンク&コー)がレース1に続き再びの接触で混乱の引き金を作ると、ターン3ではイバン・ミューラー(リンク&コー03 TCR/シアン・レーシング・リンク&コー)とヒットしたネストール・ジロラミ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/ALL-INKL.DE・ミュニッヒ・モータースポーツ)がグラスエリアを滑走。コース復帰の際には予選でタイヤグリップの発動に苦しんだタイトル候補の一角、ジャン-カール・ベルネイ(ヒュンダイ・エラントラN TCR/エングスター・ヒュンダイN・リキモリ・レーシング・チーム)と激突し、この動きに対しジロラミには次戦ソチでのグリッド降格処分が言い渡された。
その後、背後とのギャップを拡大する首位エルラシェールに対するチャレンジャーは現れず、2番手バービッシュ、3番手マグナスが、4番手のミューラーに蓋をする形でフィニッシュラインへ。その背後には、トップ10圏外から猛追を見せたタルキーニが続き、地元のファンを沸かせる走りを披露した。
「このフィールドにはどれほど高い競争力を備え、ときには“接触”もいとわない攻撃的な面々が並んでいるかを僕は知っている。頭のなかには常に(ポールスタートの)レース2のことがあったから、背後に『アグレッシブすぎる』ドライバーが来た場合には、無理に抵抗せず前に行かせたんだ」と、トップ10圏外の11位に終わっていたレース1を振り返るエルラシェール。
「おかげでマシンは無傷のまま、レース2のポールポジションから優位に戦いを進めることができた。案の定、僕の背後では最後まで“殴り合い”が繰り広げられていたようだからね(笑)」
これでポイントスタンディングでは201点としたエルラシェールを165点のバービッシュが追い、その背後わずか1点差でグエリエリが続く展開となったタイトル戦線。11月27〜28日には新規追加ロシアのソチ・オートドロームで、2021年WTCR最終戦が争われる。


