「そう、これに関しては……NHRAのメンバー全員と話し合いを重ねたが、彼らもレースカーにもっと生産車のスタイリング要素を取り入れるべく挑戦したいと考えていた」と率直に明かしたグレイブス。
「彼らもその方向に進みたい願望があり、我々としてもイメージ訴求の点でそれを望んでいる。しかし生産車のタテヨコ比に近いNASCARやトラック・シリーズならまだしも、ファニーカーは幅が広く、とても長大なホイールベースを持っている」
「我々のトヨタ・スープラ……とくにGRスープラでは、プロダクションカーのクォーターパネルとサイドパネルには大きなこぶや膨らみがたくさんあり、抑揚の効いた面構成が特徴となっている。それをファニーカーのデッキと車両側面に移植するにあたり、それが『トヨタGRスープラのように見える』ことを確認するのに多くの作業が必要だった」
このデザイン作業を通じて北米トヨタ本社と協業したCALTYは、CFD(Computational Fluid Dynamics)による初期のデザイン作業を経て風洞試験を実施し、NHRA技術部門を満足させるために、それらの性能要件を満たす開発工程が採用された。
「それは我々が慣れているよりもはるかに大きな仕事だった。このループでは、変更を確認したい内容や領域のパフォーマンス・フィードバックを提供し、変更後でも可能な限り多くのスタイルを維持できるようにした。個人的には、今日競合する他のどのファニーカーよりもはるかに多くのキャラクター要素を持っていると手応えを感じているんだ」
一方、このクルマのステアリングを握る第一人者のトッドも、今回のプロセスのもうひとつの珍しい部分として“ドライバーの視界”についてのフィードバックを提供し、安全性向上に貢献できたことを歓迎するコメントを残した。
「本当にワクワクする経験だった。彼ら(北米TRD)は私に対し『何を改善して欲しいか』について質問をしてきたんだ。通常、この世界のドライバーはそれを求められず『黙ってそこに座れ、シグナルに反応して床までガスペダルを踏め』と言うだけさ。でも競争をより良くし、ドライバーが快適であり、勝つために必要なすべてのツールとリソースをトヨタは求めていると感じたんだ」と、2018年にはカムリ・ファニーカーでタイトルを獲得したトッド。
「まずクルマの中でカメラグラスを着用し、最終的にはヘルメットにバイザーカムを取り付けて、自分が見ることが出来るものと見えないものの視野を確認した。その視界に関するフィードバックを元に、彼らは安全フォームを備えた頭部周辺空間の拡大と車室温の管理を徹底した。その結果、現在のトヨタTRDカムリよりもはるかに優れたものに仕上がったよ」

