スタート直後の攻防では2番手フィネンチが背後のエースに貢献しようとポールシッターに仕掛け、このバトルにペーニャも参戦。三つ巴でお互いにコンタクトを伴いながらのレインバトルを繰り広げる。
その状況を利用して前進したのが5番手発進のサンテロで、ヘアピン出口でフィネンチのルノーに張り付くと、オープニングラップ終了のホームストレートで早くも首位浮上に成功する。
この時点で2番手にカナピノが続き、ペーニャは6番手と結果的にポジションアップは果たせず。後方から迫る連覇経験者アルドゥソのシビックをケアする必要に迫られる。その状況を打破しようと、ふたたびチームプレーに出た3番手フィネンチは、前を行くライバル陣営のシボレーにサイド・バイ・サイドを挑むと、ふたりは雨中のサーキットをそのまま周回し、悪天候のなか詰めかけたファンからは大きな拍手が沸き起こる。
その後さらに雨脚が強まると、一時は4番手まで浮上したトヨタのエースがジリジリと後退するのとは対照的に、ルノーのペーニャがペースアップ。シボレーのラヴァーを仕留めて4番手とすると、フィネンチはすぐさまラインを譲ってエースを表彰台圏内へと先行させる。
ここからカナピノとの直接対決……と思われた矢先に“無用なバトルは避けた”とでも言わんばかりにルノーのオーバーテイクを許したカナピノは、数学上の優位性を考慮して3番手でレースを進め、背後のフィネンチを抑えるのに専念。これでルノー勢が逆転タイトルを得るためには、当事者の2番手ペーニャは首位を行くサンテロのカローラを、4番手のフィネンチがライバル候補の当事者カナピノをともに仕留めることが必要になった。
しかし無常にもレース最大時間の方が早く訪れ、トラック上の雨量が増すなかで首位サンテロに迫ったペーニャだったが一歩及ばず。TGRの“スピードスター”はシーズン最終戦で今季2勝目、キャリア通算3勝目を飾るとともに、2位ペーニャ、3位カナピノの表彰台に。この結果、カナピノが221点、ペーニャが213点で、シボレーのエース2度目のチャンピオンが決定した。
「非常に激しく厳しいレースだったが、僕らのクルーズは濡れた路面はもとより、一部乾いたレコードラインでも非常にうまく機能した。実際1日を通して素晴らしい時間を過ごしたジュリアン(・サンテロ)より、後半のレースペースは良いくらいだったからね」と、上機嫌で振り返ったカナピノ。
「でも雨量が増した終盤はやっかいなことに、フルーエンスのペースが上がった。レオ(・ペーニャ)は追いつきざまにとてもタイトな動きで僕を追い越し、すぐに(ダミアン・)フィネンチが襲い掛かってきた」
「彼ら2台がともに前に出た場合、ルノーにタイトルが渡ることは理解していた。雨が降り始めてから最後まで瞬きする間もない、ひどい状況だったよ。3回か4回はコースをはみ出したし、不可解なアドレナリンを感じた。それは完全な狂気だったよ」



