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投稿日: 2022.05.15 17:09
更新日: 2022.05.15 17:10

難しいコンディションで怒涛の追い上げをみせた佐藤琢磨「良い流れでインディ500を迎えられる」


海外レース他 | 難しいコンディションで怒涛の追い上げをみせた佐藤琢磨「良い流れでインディ500を迎えられる」

 NTTインディカー・シリーズは、5月に天王山とも言える第106回インディ500を控え、そこに向けて段々と気運が盛り上がっている。先週は同じアメリカのマイアミで初のF1グランプリが開催されており、アメリカ国内のモータースポーツ熱はさらに高まっていた。

 そのインディ500の前哨戦とも言うべきGMRグランプリも、今年は入場制限もなくほとんどの観客がマスクなしでインディアナポリス・モータースピードウェイに来場。コロナ禍以前の活気がスピードウェイを埋め尽くしている。

 佐藤琢磨はインディカー参戦以来13回目のインディ500を迎えることになるが、2度のインディ500チャンピオンとして、ここでの人気は根強い。オートグラフセッションなどを行えば長い列もできる。そこで琢磨はファンの期待にどれだけ応えられるだろうか。

 今シーズンここまでの4戦で、琢磨はテキサス以外に良いところを見せられていない。

 まず予選までにマシンの仕上がりに時間がかかり、スターティンググリッドが後方となって、レースで追い上げに終始するという展開が続いた。

 だが今回のインディGPでは、その憂いを払拭するような期待が持てた。 昨年チームにいたロマン・グロージャンがポールポジションを獲得しており、彼の置き土産でもあるデータは、琢磨にとっても有益で走り出しのフィーリングは良かったと言う。

 金曜日のFP1は22番手だったものの、セッティングを変えて臨んだFP2では14番手まで浮上。トップとの差は0.4秒だった。

 1周1分10秒あまりのコースでは、差もわずかで、誰がトップに立っても、最後尾になっても驚かない。それほど僅差で26台が戦っている。

 予選グループ1に振り分けられた琢磨は0.0025秒差でQ1突破がならなかった。13番手というスターティンググリッドは。今季のロードコース、ストリートを通じてベストのグリッドだ。

 翌日の決勝スタート前に、スピードウェイに雨が降る。レース当日の天気予報は芳しくなく、この雨が誰に味方するのか。レインタイヤのスタートでレースは始まっていったが、すでに雨は小降りでコースはまもなく乾きそうだった。

ウエットコンディションでのスタート。ターン1になだれ込む各車
ウエットコンディションでのスタート。ターン1になだれ込む各車

 そこで琢磨は自らピットに無線で入ると伝え、レース2周目でピットに入ってきた。琢磨と同じ作戦を取ったのはコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)だけ。

「スタートで接触してフロントウイングがダメージを負ってしまった。だけど交換するほどのこともなく、そのままレッドタイヤに変えてコースに戻りましたた」と言う琢磨。

 結果的にはこれが好判断で、翌周にはほとんどのマシンがタイヤ交換に入ったために、大きくポジションアップするきっかけとなった。

2周目でドライタイヤにいち早く交換する佐藤琢磨
2周目でドライタイヤにいち早く交換する佐藤琢磨

 これで7番手まで上がった琢磨は、コナー・デイリー(エド・カーペンター・レーシング)、ジョゼフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)もパスし5番手に。

 さらにイエローコーション明けの20周目にはターン1でウィル・パワー(チーム・ペンスキー)もかわして4番手に上がった。

 琢磨は「前にはハータとマクラーレンのふたり、パト・オワード、フェリックス・ローゼンクヴィストだけ。その瞬間、みんな若いなぁと思いましたよ」と笑う。

 32周目に最初のピットストップを行い7番手になってコースに戻ると、42周目のイエローコーション明けで前のマクラーレン2台が接触しスピン。琢磨は避けきれずグリーンに出た後スピンして大きくポジションを落とす。

マクラーレン同士のクラッシュを避けスピンを喫する佐藤琢磨
マクラーレン同士のクラッシュを避けスピンを喫する佐藤琢磨

 ここで20番手以降とほぼ絶望的なポジションまで落ち、さらに雨の状況でレインを履くとまた路面が乾き始めてレッドに戻すと言う2度手間もあって、一度はラップダウンになってしまった。

 ただ雨に振り回されているのはライバルも同様で、コースではスピンやコースアウトが続出。琢磨はしぶとくコースに止まってイエローを使って周回遅れを挽回し17番手から追い上げた。

 レース終盤は雨もひどくなり、もはや2時間のタイムレースとなるのは間違いなかった。グリーンになれば、またイエローになるという繰り返しだったが、ウエットの琢磨は水を得た魚のようにポジションを挽回し、66周目には17番手から10番手までジャンプアップ! その後もファンパブロ・モントーヤ(アロウ・マクラーレンSP)らとバトルしながら、ポジションを上げて7番手まで浮上していた。

 そのモントーヤがウォールにヒットすると、最後のイエローコーションとなって、レースはそのままペースカーに先導されて終了。琢磨は浮き沈みの激しいレースを生き残って、今季ベストの7位でレースを終えた。

「久しぶりにこんな雨のコンディションになって上に行ったり下に行ったり、忙しいレースでしたけど、チームも頑張ってくれて今季ベストのリザルトでフィニッシュできました。この良い流れでインディ500のプラクティスを迎えられるのは良かったと思います」と笑みも溢れる。

 中二日の休みを置いて、いよいよ火曜日からインディ500が始まる。


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