シーズン後半初戦は見せ場を作れず14位の琢磨「コースオフで落ちてしまったのがすべてだった」
6月まで怒涛の勢いで8戦を消化したNTTインディカー・シリーズは、7月に入りシーズン後半戦に突入。ミド・オハイオで第9戦を迎えた。
佐藤琢磨とデイル・コイン・レーシング・ウィズ・リック・ウエア・レーシングは、前戦ロードアメリカの後ミド・オハイオとアイオワのオーバルでテストを消化してきた。
特にミド・オハイオはレースを目前に控えた中でのテストだったが、琢磨は「テスト前日まで悪天候でコンディションが悪く、シーズン前にできなかったプログラムを淡々と消化したようなテストでした」と言う。
ミド・オハイオは嫌いなサーキットではないものの、過去上位入賞も少なくデイル・コインの底力に期待したいところだが、プラクティスから琢磨はやや迷走気味だった。
金曜日のFP1では15番手で、順位以上に手応えはあったものの、土曜日のFP2は22番手に沈んだ。ただデイル・コインのチームにとって朗報だったのは、チームメイトのルーキー、デイビット・マルーカスが順調に走り、FP1を8番手、FP2を4番手と好調だったことだ。
「デイビットとはセッティングを分けて走っていて、彼のデータも参考にして予選に臨みたいと思います」と言う琢磨。
予選ではマルーカスが8番手のグリッドと順調だったのに対し、琢磨はQ1で10番手、総合19番手という順位。これには琢磨も満足できなかった様子だ。
「リヤのスタビリティがなくレッドタイヤでのグリップ感も足りなくて計測2周目には、もうグリップが足りなかった……」と足早にガレージに消えてしまった。
日曜朝のウォームアップでは、変えたセッティングが効果を表して10番手のタイムをマークしていた。決勝に向けて追い上げることができるのだろうか。
「レッドのタイヤがどこまでグリップするのか周回は足りないのでまだわかりませんが、最初はレッドタイヤを履いていきたいと思ってます。その後にブラックを履くか、レッドを履くかは成り行き次第で」と言う。
スタートで琢磨は3台をかわしポジションを上げたが、後ろから来たペンスキーのウィル・パワーがターン9で琢磨の左後ろから当たり、パワーはスピンしてしまった。
スタートでレッドタイヤの効果もあり、15番手までポジションを上げた。最初のスティントは28周と長めにコースに残り、そこからピットに向かう。ピットではややもたついてしまい、またアンダーカットに成功した2台にポジションを譲る形となって17番手に下がる。
第2スティントはブラックタイヤでプッシュを続けたが、リヤのグリップ感が足らず、48周目にはターン9でコースオフ。なんとか自力で戻って来たものの、ほぼ最後尾に近い23番手まで落ちてしまう。
2回目のピット直後にイエローコーションとなったため、ギャップを埋めることには成功したのは幸いだった。
あまりイエローコーションの出ることの少ないミド・オハイオながら、今年のレースは珍しくイエローが多発する。フェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレンSP)のようにマシントラブルに見舞われる者もいれば、コースアウトしてマシンを止めてしまう者も。特にレース終盤で荒れたのは、琢磨にとっては幸いだった。
琢磨の古巣でもあるアンドレッティ・オートスポートは、アレクサンダー・ロッシがロマン・グロージャン、デブリン・デフランチェスコと接触したり、そのグロージャンもコルトン・ハータに当たりコースオフさせるなど、蜂の巣を突いたような騒ぎだった。
おかげで琢磨も労せずしてポジションを上げることになるが、思った以上の追い上げをすることはできなかった。最後のスティントを21番手から追い上げて14番手までポジションを上げたところでチェッカーとなった。
序盤はチップ・ガナッシのマーカス・エリクソンやメイヤー・シャンクのエリオ・カストロネベスとバトルしていたが、彼らがそれぞれ6位、8位の結果でフィニッシュしているのを見るとなんとも悔しい結果だ。
さらには1周目で琢磨と接触し最後尾に落ちたウィル・パワーが3位でチェッカーを受けている。このような勢いは今日の琢磨にはなかったかもしれない。
「最初はポジションも上げて良いペースだったんですが、最初のピットストップでアンダーカットもされたし、ブラックでプッシュした時もマシンが安定しなくてコースから出てしまった」
「あれで落ちてしまったのがすべてでしたね。トップ10ではフィニッシュしたかったんですが‥‥」
後半戦の折り返しのスタートとしては残念なレースとなったミド・オハイオ。次戦カナダのトロントは3年ぶりの開催となる。ここで風向きを変えることはできるだろうか。