「前回同様、苛立たしい1日だ。BMW自体は良いバランスだったのに、ふたたびハイブリッドの問題に悩まされ、2周目には故障してアシストなしでタイムを刻むことになった」と続けた前人未到、5度目の王座に挑んでいたターキントン。
「問題はセッション全体の流れの欠如だ。トラックにいるよりピットで過ごす時間が長く、最高の状態でトラックにいるのが恋しいよ。完全に制御できない要因で僕らの機会は奪われた。これ以上のことはできなかったよ」
こうして迎えた決勝日は、レース1から「最高のクルマを手にした」と語ったイングラムの言葉どおりの展開となり、都合2度のセーフティカー(SC)リスタートにも動じず、ヒョンデが首位のポジションを堅守する。
その一方で、2番手ブッチャーのトヨタにも挑戦できなかったサットンのフォードは、残り2周でヒルのBMWにも襲撃され4位に陥落。5位まで挽回して来たターキントンは抑え切ったものの、この結果ランキング上位の差は6点にまで縮まることに。
続くレース2でもポールシッターの勢いは止まらず、最初のふたつのコーナーで自身の古巣、トヨタ・カローラの挑戦を退けたイングラムは15周を走破。そのTGRカローラのわずかな隙を突いたヒルが2位、そして3位にはラスト2周でふたたび這い上がってきたターキントンの表彰台となり、4位にブッチャー、サットンは5位に甘んじるリザルトとなった。
これでヒルに対し11点のリードを築いたイングラムは、最後のリバースグリッド戦に挑むと、首位発進の僚友ダン・ロイド(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8・TradePriceCars.com/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)が、ジョシュ・クック(リッチエナジーBTCレーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)らに対し首位を維持する背後で、サットン、ヒルを相手にテール・トゥ・ノーズの追走劇でファンを沸かせることに。
決定的瞬間はファイナルラップに訪れ、サットンに対しパドックヒル・ベンドで最後の勝負に出たヒルの、さらにインサイドにマシンをねじ込んだイングラムが、BMWを出し抜いて5番手浮上に成功。今季3勝目の僚友ロイドと、インディペンデント王座を獲得した2位クック、そして週末2回目の表彰台を獲得したブッチャーに続き、4位サットンの背後でチェッカーを受けたイングラムが、待望のBTCCチャンピオンを手にする結果となった。
「僕はこの瞬間について、文字どおり人生全体で考えてきた。これが僕のやりたかったことで、勝ち獲りたかったのはまさにこれなんだ!」と、チェッカー後に初王座の喜びを爆発させたイングラム。
「このタイトルにどれほど意味があるか、言葉では言い表せないよ。レース中には誰かに助手席に来てもらい『大丈夫、落ち着いて!』って言って欲しかったし、無線では毎ラップ、周囲の情報やギャップ、その顔ぶれを伝え続けてもらった」
「なぜレース以外の他のことをするんだろう? 僕は世界で最高のチャンピオンシップに参加していて、僕らはすべてを犠牲にして人生を捧げてきた。5歳のときにオートスポーツ・インターナショナル・ショー(ASI)でマット・ニールに出会い、僕はBTCCと恋に落ちた。この先の数週間は(現実かを確かめるため)ずっと頬が痛いまんまだろうね(笑)」



