そのETRCは2022年シーズンを通じて新たな試みにも挑戦しており、開幕戦のイタリア・ミサノからは毎戦、パドックにて“イノベーション・キャンプ”と呼ばれる次世代技術の見本市を開催してきた。
この催しでは、各メーカーが持続可能な開発成果を紹介し、トラック業界やドライバー、そしてファンに向け、代替動力源のトラックを紹介するためのプラットフォームが提供されてきた。
「このイノベーション・キャンプも、業界の代表者とファンの両方から非常に好評を博した」と、その手応えを語ったフックス。
「我々の戦略の一環として、EVやハイブリッドに限らず、あらゆる種類の技術にオープンでありたいと考えている。合成燃料やHVO、バイオLNGなどあらゆる技術の車両をパドックに展示できたのは素晴らしいことだったね」
開幕戦以降、すでにメルセデスやボルボ、ルノー、ヒョンデ、イベコ、そしてオランダのDAFなどが出展し、フランスに拠点を置くガウシンの『ダカールラリーH2レーシングトラック』や水素バスなど、あらゆる車両が姿を見せた。
トラックレーシングの“聖地”とされるドイツ・ニュルブルクリンクのレースウイークには、ヒョンデが『エクシエント・フューエル・セル』と呼ばれる燃料電池を搭載した水素駆動のトラックを初めて展示し、同社としてもロードカーの技術で成功を収めた後、2019年に最初の燃料電池駆動の商用車を発売し「水素の未来を確信している」との見通しを明かしていた。
グループ傘下であるヒョンデ・ハイドロゲン・モビリティAGのCEOを務めるベアト・ハーシも「ヒョンデは過去20年間、燃料電池の開発を続けてきた。そして4年前、乗用車部門で成功を収めた燃料電池をトラックに搭載することを決定し、これが将来の解決策であることに気付いたんだ」と強調する。
さらに世界初、最古のトラックブランドのひとつとして知られるボルボ・トラックは、2019年にEVトラックの連続生産を開始し、それ以来、さまざまな輸送ニーズに合わせて電動トラックの事業を拡大している。
「企業が自らの責任をますます認識するようになるにつれ、より環境に優しい車両に対する需要は過去数年間で確実に増加している」と、電動車両を扱うボルボFEエレクトリックのドイツ法人ディーラー責任者を務めるミハエル・ブレナー。
「しかし、現在市場で入手可能な代替ソリューションに関する知識の欠如と、充電インフラストラクチャの欠如により、多くの企業が車両を代替動力車に切り替えることを妨げている可能性がある……とも考えているよ」


