明けた日曜の現地11時40分に開始された30分+1ラップ勝負は、そのポールシッターの予言どおりにまったく別の展開を見せ、グリッド上で5番手から出た“スリー・タイムス・チャンピオン”ことセラが老練な技術を披露。戦略とピットでの優れた作業を組み合わせたWEC世界耐久選手権レギュラーは、義務ストップウインドウの後にリードを奪い、バプティスタの僚友リカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)を2位に従え、ゴイアニア4勝目、キャリア通算22勝目を飾った。
「そのポジションから勝てるとは思ってもいなかった。5番手から1位なんて本当に難しいことだからね。でもマシンのフィーリングはとても良かったし、エンジニアは僕の要求を隅々まで把握し理解している。チームはピットストップでもセンセーショナルな仕事をしたし、これらすべてがチームの能力を示している」と、盤石の開幕勝利を収め満足げなセラ。
続いて午後に開始されたリバースグリッドのレース2では、一転してTGRブラジル陣営が攻勢を掛け、こちらも5番手発進となったカミーロが躍動。さらに14番手スタートのバリチェロも失地挽回の勢いを見せ、わずか6周で6番手にまで浮上してくる。
午前の再現とばかりに義務ピット一巡で首位を奪ったカミーロは、序盤の接触で幅広リヤウイングにダメージを負いながらも食い下がった、FP1最速マウリシオを振り切りトップチェッカー。3位にはバリチェロが続いたものの、レース後の審議で2021年王者ガブリエル・カサグランデ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・クルーズ)との序盤のアクシデントで5秒加算となり、惜しくも6位降格となった。
フィニッシュライン通過直後にマシンを停め、スタンドの観衆を前に跪いて喜びを表現した勝者に対し、事情を知るファンからは「カミーロ」の大合唱が贈られることに。この瞬間、現役ドライバー史上最多の通算38勝とし、カカ・ブエノ(KTFスポーツ/シボレー・クルーズ)の記録を更新するとともに、その“帝王”ブエノもキャリア通算333回目と334回目のレース出走を果たし、伝説のインゴ・ホフマンを上回る歴代最多出走ドライバーとなった。
「僕がモータースポーツに携わっていられるのは、最初から支えてくれたサポーターである父と叔父のおかげだ。彼らがいなかったら、僕もここにいなかった。開幕まで1週間でその叔父を亡くした事実は、僕を本当に傷つけた。取り返しのつかない損失なんだ。だからこそ今日は、僕の人生で最もエキサイティングなレースであり、最も象徴的な勝利であり、だからこそ史上最多勝記録を作れたんだと思う」と、振り絞るように語ったカミーロ。
週末の結果で、レース2でも8位を記録したセラが43ポイントで首位発進を決めた2023年のSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”は、約3週間後の4月21〜23日にインテルラゴス、ホセ-カルロス・パーチェで第2戦が争われる。



