更新日: 2023.05.12 19:09
今年も個性あふれるインディカールーキードライバーたち。中盤戦での飛躍はなるか?
ルーキーランキング2番手はアグスティン・カナピノ。フンコス・ホーリンガー・レーシングの創始者で現共同オーナーのリカルド・フンコスはアルゼンチンの出身。彼がカナピノを口説き落としてインディカーへと連れて来た。
カナピノは母国で大人気のツーリングカーレースで15回もチャンピオンに輝いているスーパースター。ワールドカップ・カタールでチャンピオンになったサッカーがダントツ人気のアルゼンチンだが、レースの、それもツーリングカーの人気はとても高く、スターは悠々と暮らしていける。
カナピノは母国アルゼンチンで、F1グランプリで5回チャンピオンとなったファン・マヌエル・ファンジオに次ぐレーシングドライバーと評価されている(F1グランプリで12勝のカルロス・ロイテマンより上!?)。
すでに33歳にだが、フンコスは彼をアメリカのトップオープンホイールの世界へと引っ張って来た。彼の参戦をきっかけとして、インディカーがアルゼンチンでのレースに踏み切る可能性も出て来ている。
昨年の暮れ、フンコス・ホーリンガー・レーシングはチームのインディカーを母国へと持ち込み、エキジビションランを行った。そこでドライバーを務めたのがカナピノだった。
「あのイベントは大盛況だった。7万人(!)以上が集まった。大きな話題となったので、とても嬉しかった」と彼は話した。
リカルド・フンコスは、「彼はインディカーではルーキーかもしれない。しかし、彼が飛び抜けた才能の持ち主であることに疑いはなく、2023年のインディカーシリーズに良い意味でのインパクトを与えることとなるだろう」と予言している。
カナピノも、「新しいチャレンジをおおいに楽しみにしている。オフの間から精神的にも、技術的にも万全の準備を整えられるよう努力をしてきた。こんなチャンスを与えてもらえたことを光栄と捉え、自分の持つ100パーセントの力を出すつもりでいる。出場するレースではすべて完走を目指し、同時にドライバーとして進歩し続けることが目標だ」と決意を語ってシーズン入りした。
カナピノの驚くべき点は、英語のマスターの速さだ。開幕前の2月に行われた合同テストで彼は、「3カ月前は“ハロー”しか言えなった」と言っていたが、記者会見もほぼ問題なくこなしていた。
「インディカー挑戦が決まってから、1週間に2、3回レッスンを受けることから始めた。英語の上達にフォーカスしている。自分は完璧主義者なので、毎日勉強していおり、エンジニアとの会話ぐらいはできるようになっている」とも彼は話していた。こうした献身的な姿勢がレースでも活かされているのだろう。
カナピーノはオープンホイールの経験がない。
「インディカーは世界で挑戦のしがいがあるシリーズだ。競争の激しさは世界のナンバーワンだ。ロマン・グロージャン、スコット・ディクソン、ウィル・パワー、カラム・アイロットなどインディカーには世界中からベストのドライバーたちが集まっている」
「自分はマシンのこともコースのことも知らない。オーバルの経験もない。しかし、こんな挑戦ができるのは光栄なこと。難しいのは承知の上。でも自分には自信がある。少し時間はかかるだろうが、毎日何かを学び取り、進歩し続けるつもりだ」
母国を離れての生活も今回が初めてというカナピーノだが、アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)やパト・オワード(アロウ・マクラーレン)はネイティブのスペイン語を話しており、今のインディカー・シリーズでなら孤立感はさほど感じないで済むだろう。
カナピーノの開幕4戦は、セントピータースバーグで予選21番手から12位フィニッシュし、初オーバルだった第2戦テキサスでも予選が19番手で、決勝はルーキー最上位の12位とどちらも素晴らしい結果を残した。
ロングビーチは予選26番手、決勝25位と地味な結果に終わったが、バーバーで予選でルーキー最上位となる22番手につけた。しかし、決勝は26位だった。
今回のバーバーで勝ったのはスコット・マクラフラン(チーム・ペンスキー)。彼もオープンホイールでのレース経験をほとんど持たず、ツーリングカーで圧倒的な王者となってからインディーカーへと挑戦してきて、トップチームからの参戦ではあるが、すでに4勝を挙げている。カナピノにもインディカーで成功する可能性は十分にある。