更新日: 2023.05.12 19:09
今年も個性あふれるインディカールーキードライバーたち。中盤戦での飛躍はなるか?
ルーキーランキング3番目はスティング・レイ・ロブ。デイル・コイン・レーシング・ウィズRWRからのエントリーだ。
彼はアメリカ北西部の自然豊かなアイダホ州(人口191万人=2021年)の、ペイエット(人口8,500人=2021年)という小さな町の出身。スティング・レイという名前は、もちろんシボレーのスポーツカーであるコルベットから来ている。
アイダホ育ちの彼は高校でバスケットボールをプレイし、トレイルランニングにも挑戦していたが、レーシングカートに5歳から親しんだ彼は高校時代にフォーミュラカーの世界へと飛び込み、プロフェッショナルドライバーを目指すこととなった。
2020年にUSフォーミュラプロ2000でチャンピオンとなり、翌年からインディNXT(当時のインディライツ)にフンコス・ホーリンガー・レーシングから参戦。2022年はアンドレッティ・オートスポートに移籍し、最終戦で初勝利。年間ランキング2位となってインディカーへとステップアップしてきた。
「2022年が終わる時、自分の2023年のプランは決まっていなかったけれど、インディカーにステップアップすることは決意していた。今年からインディNXTはタイヤが変わるので、それまでの参戦で得たデータは誰も使えなくなる。残るメリットは感じられなかった」とロブ。彼の話には理系の学生的な饒舌さとロジカルさがある。
「いくつかのチームと話をしていたが、その中でデイル・コイン・レーシングが最上位にいたわけではなかった。インディライツチャンピオンのリヌス・ルンドクイストがMSDと提携しているDCRでシートを得るものと決めてかかっていたから」
「しかし、それが間違った認識だとわかって、すぐさまマネジャーのピーター・ロッシ(アレクサンダー・ロッシの父親)に交渉を始めてもらった。DCRは2022年の暮れにマーカス・アームストロングらをテスト。自分は1月になってからテストを走り、そこでのパフォーマンスが非常に良かったので話が前に進んだんだと理解している」
同い年のデイビッド・マルーカスとのコンビでロブはルーキーシーズンを戦う。
「僕らはヤングガン。力を合わせて良いパフォーマンスを発揮したい。デイルのチームは小さく、強豪チームのようなリソースは持っていないけれど、デイルほどのフレキシブルさを大きなチームは備えていないと思う。デイルが指揮をとるチームはパッと方向性を変えるが可能」とロブは自らの体制をポジティブに捉えている。
「インディライツとインディカーはマシン特性が似ており、最初のテストから自然に走らせることができた。インディライツよりマシンを振り回す走りが必要がなく、インディライツ時代に”こういう動きをしてくれたらいいのに……”と思っていた、その通りの動きをしてくれる感じ」と語っているロブ。
デビュー4戦を見ると、開幕戦は予選23番手からスタート1周目の多重アクシデントに巻き込まれ、決勝16位。インディカーでの初オーバルだったテキサスは予選23番手、決勝25位。ロングビーチは予選21番手、決勝18位。バーバーは予選23番手、決勝はマシン・トラブルで27位と、まだ思うように力を発揮させることができていない。
ベテランから学ぶチャンスには恵まれていないチーム体制でもあるが、理論派のロブなら一歩ずつ着実に前身し、パフォーマンスを上げて行くことが期待できる。
最後の4人目はベンジャミン・ペデルソン。デンマークのコペンハーゲン生まれでアメリカのワシントン州シアトル育ちのドライバー。現在はインディアナポリス在住だ。
「2016年にレースを始めた時から目標はインディカーだった。レース、雰囲気、ファン、イベント、コース、などなどすべてが本当に素晴らしいから」とペデルソンは言っている。
彼は2022年のうちからフォイトのピットで無線を聴きながらレースを見たり、エンジニアとのミーティングに参加させてもらったりしてインディカーへのステップアップに向けた準備を進めていた。
若手育成に意欲的なAJ・フォイト・エンタープライゼスは、ペデルソンと複数年契約を結んでいる。チームを引っ張るラリー・フォイトも、「ベンジャミンのレースに対する情熱には並々ならぬものがある。100パーセントの力を注ぎ込み、彼は優勝を目指しして行くことだろう」と将来性を高く評価している。
ペデルソンもインディライツを2シーズン戦った。そして、ロブ同様に2022年に初勝利を挙げた。それはロブより1戦前のポートランドにおいてで、彼はそのレースでポールポジションも獲得した。
「インディライツシリーズ、そしてインディライツのマシンは、ドライバーたちがインディカーへとステップアップし易いものになっている。週末のフォーマットも似ているし、ポイントシステムも、ルールも同じ。競技長も同じ。マシンはインディカーへと進んだ時に、その違いの大きさに戸惑わなくて済むものになっている」とペデルソンは話している。
第5戦GMRグランプリを前に24歳になるペデルソン。セント・ピーターズバーグは予選27番手で、決勝は1周目クラッシュでマシンを大破し、27位。テキサスのオーバルでは予選で13番手という好成績を残した。これは先輩チームメイトのサンティーノ・フェルッチのひとつ上。決勝は15位だった。これが今のところ彼のシーズンハイライト。ロングビーチは予選23番手、決勝24位。バーバーは予選25番手、決勝22位だった。
テキサスでの速さをインディ500でも発揮してくれることを期待したい。
昨シーズンも序盤戦は苦しんだルーキードライバーたち。シーズン後半にはルンガーやマルーカスが速さを見せていった。今年の4人のルーキードライバーたちもどんな成長を見せてくれるのか注目だ。