しかし、やっぱり今年も優勝候補の本命はチップ・ガナッシ・レーシングだろう。
午後のセッションで3番手につけたのは2008年ウイナーで、6回もシリーズチャンピオンになってきているスコット・ディクソン=226.788mph。前述の通り、午前中はエリクソンがトップで、パロウが3番手だった。午後には新加入の佐藤琢磨が226.265mphで5番手につける。

インディ500で2勝している琢磨の加入は当然のことながらガナッシにとっては大きなプラスだ。彼の豊富な経験、他チームのノウハウなどを吸収できる。このテストでは琢磨とディクソンのマシンにサスペンション調整機能のバージョンアップされたものが搭載され、戦闘力を一段高める成果が確認されていた。
琢磨の3勝目は? もちろん達成される可能性は十分にある。インディ500で最速の存在であるガナッシからの出場なのだから当然だ。
彼らのチームは、カーナンバー9が明確なエースで、次がカーナンバー10。琢磨は4台目での出走だが、強豪チームとしての地位を保って実績を重ねて来ている彼らは、走らせるマシンすべてのレベルを高め、その差を年々小さくして来ている。
それは昨年の彼らが5カー・エントリーで全員を予選トップ12に入れていたこと、一昨年は4カー体制で4台全部を予選トップ9で戦わせていたことで明らかだ。
「クルマの完成度はかなり高いと感じました。多くのテスト項目をこなせた実りの多い1日にできたと思います。思っていたよりもトラフィックでたくさん走れなかった点が心残りですが……」と琢磨はガナッシでインディアナポリスを走った最初の日を終えて語った。
ガナッシのマシンにはスピードがある。どこにどんなノウハウが詰まっているのかは明らかになっていないが、琢磨は「基本になるスピードがあるから、ドラッグ(抵抗)は意外に大きい」とも話していた。

昨年のポールポジションはディクソンで、予選2番手はパロウ。エリクソンもトニー・カナーンも予選でトップ6入りし、インディカーでのオーバル経験が非常に少ないジミー・ジョンソンまでもが予選2日目を戦うトップ12に入っていた。
レースではエリクソンが優勝し、カナーンが3位、パロウが9位だった。一昨年はトップ9がPPを争う予選フォーマットで、ディクソンがトップ。カナーンが5位、パロウが6位でエリクソンが9位。レースではインディカー2年目、ガナッシ初年度のパロウが2位で、勝ったのはメイヤー・シャンク・レーシングのエリオ・カストロネベスだった。ガナッシ勢の速さはこの2年だけを見ても非常に安定している。2020年に琢磨が優勝したのはディクソンとの戦いを制してのことだった。

その一方で、インディ500で歴代最多の18勝を挙げてきているチーム・ペンスキーは、ここ3年間のインディ500でかなり厳しい戦いをしてきている。
2021年にシモン・パジェノーが3位でフィニッシュしているものの、4カーより3カーの方が戦い易いと考え、若いマクラフランを起用するためにパジェノーを放出した彼らは、インディアナポリスで速いマシンというものを把握し切れていないのか、スピードを確保できていない。2022年のレースではニューガーデンによる13位がベスト。予選はパワーの11番手がチームの最上位だった。