ここで速さを発揮したのが前年度覇者でもあるシュートで、視界不良で滑りやすい路面条件だった昨年度の10分09秒525を大幅に短縮する8分40秒080のタイムで、自身4度目となる総合優勝をさらった。
「しかしヒドい走りだったね(笑)」と苦笑いで勝利の第一声を発したシュート。
「いやいや、大丈夫。山の頂上に到達するのはいつでも素晴らしいことだし、今日は状況がまったく違っていた。それでも、クルマは僕が臨む状況にまったく“ダイヤルイン”されていなかった。僕自身、本当に耐えて格闘したからワイルドなドライブになったね」と、今季向けに施された改良を最大限に活かすセットが見い出せなかったと明かした王者シュート。
その背後では、同大会で電動化技術の王様として君臨する『フォルクスワーゲンI.D.R パイクスピーク』でのレコード、7分57秒148の記録を保持するデュマがアタック。特徴的なカーボンコンポジット製ボディとFIA仕様のロールケージ、調整可能な回生ブレーキを備えた全輪駆動のモンスターEVバンでフィニッシュを決めたものの、ウエイトレシオ改善のため4モーターから3モーターに減らした改良も届かず。オープンクラス制覇に留まる結果に。
さらに総合3番手には、同クラスで“怪物EVバン”に挑戦したアスティエのA110が9分17秒412で続くリザルトとなった。「素晴らしい走りだったし、僕らの『アルピーヌA110 パイクスピーク』は魅力的に機能したね」と、車両重量950kg、約500PSを発生する特製モデルのステアリングを握った2022年のFIA R-GTカップ王者。
「全力を尽くせたし、最後は自己ベストを数秒更新できてうれしく思うよ。このクラスではベンチマークである、ロマン・デュマと彼の電気自動車に次ぐ2位でフィニッシュしたが、彼のEVバンは僕らのざっと3倍のパワーがある(笑)。そう考えると、これは並大抵の偉業ではなく、アルピーヌとの初出場でこのパフォーマンスを披露できたことを誇りに思うよ」とアスティエは語った。
総合4位にはTA1クラスのドナヒューが9分18秒053秒で続き、同5位にはオープンホイール部門で父クリントが持つ記録を更新したコーディ・ヴァーシュホルツ(2013年型フォード・オープン・ヴァシュホルツ・カスタム)が、9分19秒192でクラス優勝を果たす結果に。
そして日曜の第一走者スタートから約15時間が経過した頃、父ケン・ブロックの遺作でもある1400PSのモンスター4WD『Hoonipigasus(フーニピガサス)』のステアリングを握って登場したリア・ブロックは、タイム計測のない“トリビュート・ラン”で無事に山の頂へ父のクルマを送り届けることに成功した。
さらに競技者として、こちらもトリビュート・カラーの『Sierra Echo EV(シエラ・エコーEV)』を走らせた母ルーシー・ブロックも、アンリミテッド・クラス10位、総合47位で初挑戦の山を登り切っている。



