若手のカークウッドにポイントランキングで遅れを取っているグロージャン。その理由として挙げられるのは、今季は特に目立ってしまっている決勝レースでのリタイアだろう。
昨シーズンのリタイアは2回で、さらにそのうちの1回はメカニカルトラブルによるものだった。対する今シーズンは、開幕戦でのトップ争いでのクラッシュに始まり、第2戦テキサスでは上位を争うもゴール目前でクラッシュを喫した。
続く第3戦ロングビーチ、第4戦アラバマは連続2位フィニッシュを果たしたが、インディアナポリスのロードコースは不発。
その後のインディ500、デトロイトではまたしてもクラッシュを喫し、ロードアメリカは完走こそしたもののコースオフによって上位フィニッシュの望みを自ら絶った。そしてミド・オハイオでは、ハータがPPを獲得するなかでグロージャンは予選14番手、決勝13位という低迷ぶりだった。

インディカーに参戦する前から、グロージャンを見舞うアクシデントは少なくなかったのも事実だ。さらに、F1に乗っていたころから精神的な弱さについても指摘されていた。
そんなグロージャンだが、デイル・コイン・レーシング・ウィズRWRという小さなチームからインディカーにデビューし、優勝争いに絡む走りを披露した。その結果、2シーズン目にはアンドレッティ・オートスポートに“優勝請負人”として招聘された。
しかし、2022年の彼はロングビーチとナッシュビルの2位フィニッシュ以外に目立ったパフォーマンスはなかった。今季に向けては、アレクサンダー・ロッシがアロウ・マクラーレンへと移籍し、チームはさらなる結束を目指していたはずだ。
しかし、ハータは自分を担当するエンジニアと我が道を行くタイプということもあり、4台体制のメリットを活かしきれていないと言える。

■待たれるインディカー初勝利に足りないのは冷静さか
今のグロージャンは、勝利へのプレッシャーに苛まれ、精神面の安定を欠いているとしか考えられない。度重なるアクシデントは、彼がまさに陥っている負のスパイラルからくるものに他ならないだろう。
“フェニックス”というニックネームに見合う逆境(後方グリッド)からの凄まじい追い上げ……というものも見られていない。まさか、すでに諦めの境地に入っているわけでもないだろうが……。
2023年開幕戦セントピーターズバーグは、グロージャンにとって2011年のGP2以来となる勝ち星に大きく近づいたレースだった。
だが、トップを争うスコット・マクラフラン(チーム・ペンスキー)にターン5で仕掛けたタイミング、そしてアウトサイドから抜きに行くという判断は、残念ながら正しいものではなかった。
インサイドで粘ったマクラフランは、縁石に乗ってバランスを崩してグロージャンともどもタイヤバリアに突っ込みレースを終えた。結果論でいえば、次のターン6へのラインを交錯させて抜くか、バックストレートエンドのターン10で勝負を仕掛けるべきだった。
優勝から長らく離れてしまっているグロージャンは、焦りから勝負どころを見誤ってしまったのだろうか。あの開幕戦で勝ち星を挙げられていたならば、グロージャンのインディーカーでのキャリアは大きく違っていたものになっていただろう。次戦トロントでは、開幕からパフォーマンスの良いストリートで今度こそ待望の初勝利を掴みたいところだ。
