迎えた日曜も、天候絡みの混沌をさらに深めたような展開となり、レース1のオープニングでは3番手ヒルを含めて上位がポジション堅持で推移すると、その背後にはイングラムのヒョンデが浮上してくる。
しかし4周目のシケインでは、首位サットンがミスを犯しワイドになりクックが先頭へ。この際、サイドウェイ状態でトラックを横切ったフォーカスSTとシビックがわずかにコンタクトしたものの、両者ともレース続行が可能な程度で生き延びる。
直後に雨脚が強まるとレースは大混乱に陥り、7周目の終わりには各車ウエットタイヤへの交換でピットに飛び込み始め、この時点で9番手だったトム・チルトン(ブリストル・ストリート・モータース・エクセラー8/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)が真っ先にレインを装着する。
僚友イングラムもその2周後のラップ9で履き替え戦列復帰するかたわら、トラック上ではスリックで奮闘するサットンがクックから首位の座を奪還。するとシビックはそのままストレート直後の“Duffus Dip”を直進し、バリアの餌食となってしまう。
そのままエイデン・モファット(ワン・モータースポーツ・ウィズ・スターライン・レーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)や地元出身ロリー・ブッチャー(TOYOTA GAZOO Racing UK/トヨタ・カローラGR Sport)の前で、曲芸的なマシンコントロールで首位を守ったサットンだったが、ふたたびターン1でスタック車両が発生したことから、セーフティカー(SC)導入が宣言される。
そのリスタート直後にピットへ飛び込んだサットンに対し、ステイアウトした背後の2台もサーキットを直進してリタイアを余儀なくされ、ふたたびSC出動の引き金に。残り2周でレースが再開されると、序盤に早めの判断を降していたイングラムが首位に立ち、BMWのヒルを挟んで僚友チルトンを従える構図となる。
それでも2回目のセーフティカーに助けられ7番手まで挽回したサットンだったが「これで選手権首位陥落か……」と思われたレース後に、さらなる波乱が待っていた。
最初にゴールラインを越えたイングラムと3番手チルトンのヒョンデは「最低地上高違反」で失格処分となり、ヒルが繰り上げ優勝。以下アンドリュー・ワトソン(カーストア・パワーマックスド・レーシング/ヴォクスホール・アストラBTCC)とFP1最速コラードのトップ3へと変わる結果に。サットン自身も5位の可能性があったものの、黄旗下での追い越しでペナルティがあり最終的に6位となった。
これでレース2の先頭スタートを手に入れたヒルは、昨季も2勝と相性の良いトラックで連勝を決め、ふたたびSCでのリスタートも活用したサットンが2位に浮上してチェッカー。予選で“回った”ジェリーがグリッド位置も活用しての3位ポディウムを死守した。
「レーザーツール・レーシング・ウィズ・MBモータースポーツには本当に感謝している。彼らはこの週末に素晴らしい仕事をしてくれたし、BMWも順調だ」と、結果的に2年連続でノックヒル連勝を飾ったヒル。
「最速というわけではないかもしれないが、改善は充分すぎるくらい進んでいる。彼らチーム全員に多大な感謝を捧げたい」
そのトップ7リバースが採用された最終レース3は、スタート直前に豪雨が襲来し、ディレイからのSC先導スタートに。それでも4周目のリスタート以降、グリッド3列目6番手発進からダッシュを決めたサットンが12周目に首位に立つと、そのまま逃げ切り今季8勝目。2位にはこちらも8番手発進から浮上のクックが続き、最後は僚友に“譲られた”イングラムの並ぶ表彰台となった。
「レース1が終わった後、チャンピオンシップに関しては厳しい仕事が我々に課せられるだろうと思っていたが、トム(・イングラム)の失格とレース2での僕らのパフォーマンスで救われた。そして最後は勝利で締めくくるなんて、これ以上のものを求めることはできないね」と、週末を前に6点差だった選手権リードを、一気に37点差にまで拡大したサットン。
「これは僕がBTCCで経験する最大のギャップだが、今週末ですら物事がいかに急速に変化するかを目の当たりにしている。まだあまり興奮するつもりはないし、これまでにないほど近づいているとは思うけれど、引き続きスマートに戦う必要があるだろうね」
続くBTCC第8戦は、8月25~27日の週末にイングランドはノースハンプシャー州へと戻り、ドニントンパークのグランプリ・レイアウトで争われる。



