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 その車両設計と製造を手掛けるアウダーステック社は、前述のアルセロール・ミッタル社と共同開発したDP980R高張力スチール製の鋼管構造スペースフレームに、アルミニウム板と耐熱コーティングを施した耐火壁、衝撃吸収とエネルギー散逸のためのカーボンケブラー&アラミド製のサイドインパクト構造を備えた車体を構築。脚元ではAPレーシング製の前6POT/後4POTブレーキキャリパーと、4輪独立懸架のプッシュロッド式ダブルウィッシュボーンにペンスキー・レーシング製ダンパーを採用する。

 さらにXトラック製P1529の6速シーケンシャルトランスミッションには、最高出力500PS/7600rpm、最大トルク580Nm/4000-6800rpmを想定する専用開発の直列4気筒2.1リットル・ターボエンジンが組み合わされる。

「我々がこのビジネスで行っているイノベーションのもうひとつのポイントは、アウダーステックがすべての車両を製造し、それらをチームに販売するのではなく“Ready to Race”のソリューションでリースすることだ。チームは開発や改良に関与しない。各チームごとに実戦参加しようとする試みにおいて、クルマはより標準化され制御されている」と続けたジュリアネッリCEO。

 ホイールベースは2750mmで重量は1100kgと、パワーウエイトレシオで2kg/PS台を目指す車体には、現在シリーズに参戦するシボレーとトヨタのボディが架装され、空力性能とその特性は開幕前の各種計測で定義し、ホモロゲーション登録される予定に。さらにカーボンファイバー製可動翼を持つ“DRS”の新規導入も計画されている。

「目新しさとして、プッシュ・トゥ・パスに加えて『モバイル・ウイング』が追加される。ドライバーとチームの側から見ると、それはパフォーマンスを意味するのは明らかだ。プロモーターとファンの側にとって、それはレースの興奮がさらに高まることも意味する」

 そしてさまざまな車両システムに膨大なセンシング能力を提供するクアルコム製のスナップドラゴン5Gは、シャシー前面と背面に備えた統合ビューカメラによる映像をコクピット内に映し出すことでドライバーをサポートし、内部360°カメラはアプリ等でファンの観戦ツールとしてもリアルタイムで利用可能になるという。

 現代スマートフォンを支えるスナップドラゴンのシステムを供給するクアルコムのラテンアメリカ代表ルイス・トニスも「私たちは品質、パフォーマンス、経験を大切にしてきました。私たちのDNAにはパフォーマンスとテクノロジーをもたらすことが組み込まれています。この新しいクルマに5G接続とそのセンシングを導入し、高解像度の4Kと将来的には8Kに接続された“T-カメラ”を備えた最初のレーシングカーの1台となるでしょう」と期待を寄せる。

 こうした複数企業の参画に際し、前出のジュリアネッリCEOも以下のように新規定車両への手応えを口にする。

「彼らはストックカーに革命を起こすためにやって来て、それによってブラジルのモータースポーツの他の選手たちに新たな目標をもたらす。すでに誰もが模範としていたストックが、今度は基準を引き上げ、モータースポーツの未来を示すんだ。我々とアルセロール・ミッタルやクアルコムなどのパートナーは、全員がここまでに達成していることを非常に誇りに思っているよ」

2020年からはシボレーに加えてTOYOTYA GAZOO Racing Brasilが参入し、2メーカー対決となっている
空力性能とその特性は開幕前の各種計測で定義し、ホモロゲーション登録される予定に。さらにカーボンファイバー製可動翼を持つ”DRS”の導入も計画されている
旧来の鋼管フレームに5.7リッターのV8を搭載する現在も、SNSファン投票を反映したプッシュ・トゥ・パス機構”FAN PUSH”を実装するなど先進性を打ち出してきた

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