すでにインディカーのシミュレーター体験を済ませたと明かしたラーソンだが、北米のモータースポーツ専門サイト『racer.com』に対し「快適ゾーン内で始まった事態は、すぐに別のレベルに達した」と、衝撃の時間を振り返る。
「ミドオハイオでの訓練に参加したが、最初は制御不能になって芝生のなかに突っ込むだろうと思っていたんだ(笑)。でもすぐに『よし、うまくやれている気がする』と感じてリズムに乗れたんだ」と続けたラーソン。
「エンジニアたちはしばらく黙っていたけど、彼らはすぐ『やぁ、すべてがうまくいっているようだね』と声を掛けてくれた。でも『ブレーキングゾーンに取り組み続けて。OK、ブレーキ圧はさらに上げてもいいし、もう少し奥で深く踏んでみよう。ああ、少し良くなった』って。思わず僕は『あとどのくらい必要?』って聞いたんだ。すると彼らは『そうだな……あと1000ポンドはブレーキ圧が必要』だって言うんだ。その瞬間、僕は『えっ?』ってなったよ(笑)」
「つまり、最大ブレーキ圧力は2800ポンドほど。正気の沙汰じゃないし、そんなに何かを強く踏んだことはない。例えば、ここ(IMSのロードコース)でターン1に入るとき、最大ブレーキ踏圧は800ポンドほど。だから、ペダルを強く踏み込み、すぐにペダルを放すことを頭のなかで理解しようとするだけじゃなく、そもそもペダルをキープすることを含めて、僕にとっては非常に困難だった。最後まで完全に理解することができなかったし、理想の最大ブレーキ圧に近づくと“ヘタになった”ようにさえ感じたよ」
そんなカップ王者ラーソンの“カルチャーショック”経験は、チームメイトの登場でクライマックスを迎える。
「その後、フェリックス(・ローゼンクヴィスト)が現れて、僕よりもずっと速かったからイライラし始めた(笑)。データを見ると、まさに目からウロコだったね」と続けたラーソン。
「ダウンフォース量やブレーキングパワーについては以前から聞いていたが、彼らがステアリングの後ろで何をしているのか、テレメトリで見たことはなかった。だから、それは間違いなく興味深かった。あれほどハードにプッシュしながら、彼らがどれだけ一貫性を保つことができるかを見られたのは、かなりワイルドで間違いなく目を見張るものだった」
こうしたすべての新しい経験こそ、ドライバーとしての自身の将来に「大きく役立つはず」だと確信を深めている。
「経験全体の結果が何であれ、僕はこの経験からより良いレーシングドライバーになるつもりだ。シミュレーターに費やした短い時間でさえ、僕はすでにそれを達成していると思うよ」
ラーソンは10月にIMSの4.5マイルオーバルで義務付けられている新人オリエンテーションで、シミュレーションを超えた次のステップに進むこととなる。

