続いて見ていくのは、シボレーエンジン勢だ。
その筆頭であるチーム・ペンスキーは3台体制を維持する予定で、ドライバーラインアップも2023年と変わらない。2023年ランキングでチーム内トップの3位となったのは、スコット・マクラフランだ。シーズン4勝を挙げ、一時はタイトル争いの注目株だったジョセフ・ニューガーデンだが、結局はマクラフランに続くランキング4位でシーズンを終えた。
オーバルでは安定的な強さを誇る彼だが、ロード&ストリートサーキットでは時として、まったく戦闘力を発揮できないことがあった。毎年エンジニアを変えている(彼の要望によってではなくチームの事情で)ことが影響してのことなのか……。来季はその弱点をどこまで解消して来るかに注目だ。

チーム内最年長で42歳のウィル・パワーは、2022年のシリーズチャンピオンでありながらも2023年には1勝もできなかった。アイオワのダブルヘッダーではふたつのPPを獲得したが、ロード&ストリートでの予選でファイナルに進めたのは1回だけ……と、彼が飛び抜けた力を見せ続けて来たパフォーマンスは低下していると評さざるを得ない。
インディ500での彼らは、2019年のシモン・パジェノー以来となる優勝をニューガーデンによって達成。しかし、予選ではスピード不足に悩まされており、レースの勝ち方もルールが無理やり曲げられた結果……と言われても仕方のないものだった。
2024年のマシンは、新たにハイブリッド機構を持つパワーユニットが搭載される予定だが、シャシーセッティングの不利を新規定マシン採用によって払拭できるのか、非常に興味深い。

そして2024年のチーム・ペンスキーは、AJ・フォイト・エンタープライゼスと提携する。フォイトの2台体制はペンスキーのサテライト・チーム、あるいはセカンダリー・チームといった立ち位置になるという。
この2チーム間では、ドライバーとエンジニアの双方を育成する機能が持たせられることになるようだが、収集データ量の増加を武器に、新規定マシンによる戦いでスタートダッシュを成功させたい……という思惑なのだろう。
フォイトの2023年のドライバーはサンティノ・フェルッチとルーキーのベンジャミン・ペデルソン。ペデルソンは2年契約だったが、ペンスキーとの新体制となってもシートを維持できるのかはいまだ不明。さらに、フェルッチの残留があるのかないのかも現状では明らかになっていない。ただ、フェルッチの“インディ500参戦”のみは決定済み……という噂はある。
■期待される速さの獲得を目指すアロウ・マクラーレン
シボレーエンジン勢でナンバーツーのチームとなっているアロウ・マクラーレン。来季も引き続き3台のフルエントリーを続け、パト・オワードとアレクサンダー・ロッシに加えてマルーカスを走らせることとなった。
エース格のオワードが2023年シーズンは一度も勝つことができず、新加入のロッシは、まだチームやマシンに慣れていないこともあってか期待に沿う戦績を残すことができなかった。
そのなかで、新たにスピードとレースセンスを備えるマルーカスは、トップレベルのマシンを与えられてどんな走りを見せるのだろうか。また、彼の加入は果たしてマクラーレンにどんなプラス要素をもたらすのか。

2023年のマクラーレンは、2台から3台への体制拡大が想定通りにうまく行かずパフォーマンスにも影響していたと言える。そのため、2024年目の彼らの第一の目標はチームをフルに機能させることだろう。さらに、フンコス・ホーリンガー・レーシングとの技術提携(アンドレッティとシャンクの関係性に似たものになる?)も彼らは検討中だ。
そのフンコス・ホーリンガー・レーシング(JFR)は、2023年最終戦ラグナセカでカラム・アイロットがチーム史上ベストとなる5位フィニッシュを達成。ルーキーのアグスティン・カナピノはツーリングカー出身ながら、最終戦で3位フィニッシュも可能、という走りを見せていた。
これらふたりのドライバーたちは残留の見込みだ。マクラーレンとの技術提携がなされれば、チームのエンジニアリングは大幅に強化され、チームとしての実力も向上し、上位で戦うレースが増えることになるだろう。
最後はエド・カーペンター・レーシング。すでに彼らの期待の星であるリナス・ヴィーケイの継続参戦は確定しており、オーナー兼ドライバーのエド・カーペンターのオーバルのみの参戦も続ける計画のようだが、カーナンバー20のドライバーが未定だ。
このチームと話をしているのはアンドレッティのシートを失ったグロージャンとデフランチェスコ、そして今年のインディNXTでチャンピオンになったクリスチャン・ラスムッセンらだ。
2023年シーズンを終え、早くも動き出したインディカー・シリーズ。2024年シーズンは、ハイブリッド機構を搭載した新型パワーユニットの搭載に、大きく入れ替わるドライバーラインアップと、大きな変化を遂げて心機一転の開幕を迎えることになりそうだ。
