フェラーリは、FIAが発表した2010年の新たなバジェットキャップについて、“根本的に不公平であり、偏ったものであるとさえいえるかもしれない”と批判、フェラーリはF1への参戦を永遠に行うとは限らないとほのめかした。

 先週行われた世界モータースポーツ評議会(WMSC)の会合で、4,000万ポンドの予算制限制が正式に批准された。この制度は、任意の予算制限を選んだチームには、それ以外のチームより大きな技術開発上の自由が許されるというもの。“コストキャップ”チームは、ムーバブルフロント&リヤウイングの使用が認められるほか、エンジンの回転数、シーズンオフのテスト、風洞テストのスケールおよびスピードが制限されず、KERSに関しても倍の出力が許可される。

 フェラーリ会長、ルカ・ディ・モンテゼモロは、この規則が発表される2日前の4月28日、FIA会長のマックス・モズレーに手紙を書き、このシステムに関する疑念を表明、これを検討するための時間を事前に十分与えられなかったことへの不満をつづったという。
 ロイターによれば、ディ・モンテゼモロはモズレーに対し、フェラーリがF1において有する権利は尊重されるべきであると主張すると共に、“実際に制限をチェックするのは技術的に極めて難しい問題があると考えるため、コストキャップには以前から懸念を感じていた”と記したという。
 また、ディ・モンテゼモロは、このシステムは“チームをふたつのカテゴリーに分ける”ことになり、ファンが混乱すると主張、“コストキャップの現実的な順守に関して論争が生じた場合、F1のイメージに傷がつき、関係するチームに大きなダメージを与えかねない”と述べてている。

 コストキャップに懸念を感じているのはフェラーリだけではないが、モズレーは、早急に対策を講じなければ、ホンダに続いてF1を去るチームが今後も出てくると警告している。
「フェラーリが先頭に立ってコストキャップメカニズムに同意してくれることを願う」とモズレーは、返信したという。
「ご承知のように現在我々は前代未聞の状況に直面している。自動車業界と金融業界という、F1にとって最も重要な収入源が危機的状況にある。何もせずに悪いことが起こらないことを祈るだけという姿勢では絶対にだめだ」
「我々はすでにひとつのマニュファクチャラーを失った。私が再三依頼しているにもかかわらず、F1を継続するという法的拘束力のある保証を行ったマニュファクチャラーはただのひとつもない。いつまた撤退するマニュファクチャラーが現れてもおかしくはないのだ」
「現在の支出レベルは、インディペンデントチームにとっては維持できないものであることは分かっている。F1世界選手権が崩壊するリスクを抑えるためには、新たなチームの参入を認めなければならない。同時に、コストを大幅に削減する必要がある。これは非常に急を要する問題なのだ」

 フェラーリはコストキャップについてコメントを発表してはいないが、F1公式サイトのインタビューで、ディ・モンテゼモロは次のように発言している。
「我々は、F1は技術的な競争が行われるシリーズであってほしいと考えている。ギヤボックス、エンジン、電気系、そしてKERSについても、開発を行い、それをロードカーに応用することができるシリーズであってほしいのだ。F1に参戦するというのは、チーム、ドライバー、マシン、テクノロジー、技術者の間で熾烈な競争を行うということだ。こういったレベルを我々は維持したい。そのために我々はエンジン標準化に反対してきた」
「私は、F1の統治が安定し、信頼できるものであることが重要であると考えている。政治的な権威が強力であり、規則が明確にされ、チーム同士はコース上ではいい戦いを行うがコースを離れれば密な関係を持ち、現代的かつ有能な企業が商業権所有者である――それを我々は必要としているのだ。私は論争を起こしたくはない。F1は今困難な時期であり、論争を必要としていないからだ。私個人もフェラーリも、大きな情熱を抱いているが、だからといってこれは永遠に続くストーリーというわけではない。我々は今後の状況を見ていく」

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