毎グランプリ後に各ドライバーを10点満点で評価している英AUTOSPORTが、全19戦の点数を集計し、総合ランキングを導き出した。
今年この企画を担当したベン・アンダーソンは、予選と決勝のパフォーマンスを評価し(特に最終結果に直結する決勝を重視)、さらにさまざまなソースから得た情報を加味して各ドライバーを採点してきた。ここにはラップタイム、チームやドライバー自身からのフィードバック、バトルのパフォーマンス、ミス、チームメイトとのペース差などが含まれている。
採点は決勝終了後の日曜夜に行われるため、その後に入った情報は考慮に入れることができず、後から修正したい採点もあったとアンダーソンは認めているが、全戦の平均点によるシーズン総合ランキングは納得の結果であるとも述べている。
シーズン中のドライバー交代としてスポット参戦という形になったのは、マクラーレンのケビン・マグヌッセン(テストでクラッシュしたフェルナンド・アロンソの代わりに開幕戦にエントリー)、マノー・マルシャのアレクサンダー・ロッシ(ロベルト・メリと5戦交代)で、ふたりに関してはランキング外として点数のみ表示した。
それでは英AUTOSPORTによる各ドライバーごとの総評を添えて、20位から順にカウントダウンしていく。
20.パストール・マルドナド(ロータス):5.7点
「グロージャンに完敗」
チームメイトのロマン・グロージャンに完敗した。予選でグロージャンに勝ったのは2回だけ、獲得ポイント数は約半分、期待外れのシーズンだった。
公平を期して言うと、レースペースは比較的よく、“クラッシャー”の異名を取るにもかかわらず、自身のミス以外でリタイアしたことが多かった。だが予選の失敗が響いたケースが多すぎ、さらに決勝中のミスも減らず、いい結果につなげることができなかった。
19.ロベルト・メリ(マノー・マルシャ):5.8点
「マシンに適応できず」
F1デビューイヤーの今年、メリは苦戦した。昨年ケータハムでフリープラクティスで出走した際には光るものを見せたが、今年のマノーではほとんどのレースで苦しんだ。
チームメイトのウィル・スティーブンスより身長が高く体重が重いことが不利に働いたことに加え、限界あるMR03Bに自身のアグレッシブなドライビングスタイルを適応させることがなかなかできなかった。
ハンガリーやソチのように力を発揮したサーキットもあったが、残念ながらいいパフォーマンスを示せたレースは少なかった。
18.マーカス・エリクソン(ザウバー):6.2点
「精神面で成長見せる」
F1での2年目としては堅実な年を過ごし、2014年ケータハムでは後方に沈んでいたが、今年は中位グループで戦うことができた。
シーズン中盤以降、チームメイトのフェリペ・ナッセを意識しすぎて動揺するようなことがなくなり気持ちをしっかり持って戦えるようになってからは、よくなってきた。
しかしついてないことに、彼自身が最もいい仕事をしたレースではザウバーに入賞する力がなかった。何度かミスはあったが、シーズン全体で見るとチームメイトとほぼ同等のパフォーマンスだった。
17.フェリペ・ナッセ(ザウバー):6.3点
「まずまずのデビューイヤー」
ザウバーチームのポイントの75パーセントを彼が獲得したことを考えると、ルーキーシーズンとしてはまずまずと言っていいのではないだろうか。
デビュー戦オーストラリアで5位というのはもちろん素晴らしい結果であり、その他にもロシアの6位、モナコの9位(このレースではC34のパフォーマンスはひどいものだった)など印象的なグランプリがあった。
その一方で、期待外れのレースもあった。マレーシアではチームメイトほどの力を見せられず、カナダではFP3でバックストレートでクラッシュした。
ブレーキの問題に悩まされ続け、それが影響したレースもあった。その問題がなければいいパフォーマンスをもっと安定して発揮できるのだろう。
16.ウィル・スティーブンス(マノー・マルシャ):6.4点
「困難な条件下で優れた仕事」
昨年終盤にケータハムでF1デビューを果たした際に非常に強い印象を与えたスティーブンスは、今年マノー・マルシャでもいい仕事を成し遂げた。
マシンには全く競争力がなかったにもかかわらず、スティーブンスは限られた条件の中でいい仕事をした。チームメイトのメリと比べると体重面で有利なのは確かではあるが、全体的に彼より優れたパフォーマンスを見せていた。
5戦にわたりアレクサンダー・ロッシがチームメイトを務めた際には、さほど強くは見えなかったが、スティーブンスは今季の難しい状況下で自分が成し遂げた仕事に満足していいだろう。
15.キミ・ライコネン(フェラーリ):6.5点
「今年もチームメイトに大敗」
去年のライコネンはまだ言い訳ができた。フェラーリに復帰したばかりであり、チームメイトはチーム内にポジションを確立していたフェルナンド・アロンソ、マシンも非常にドライブしづらいものだったからだ。
しかし今年、新加入したベッテルが圧勝、ライコネンは昨年同様、チームメイトに完敗した。SF15-Tは昨年型車に比べると圧倒的に優れたマシンだったため、ライコネンは多数のポイントを稼いだが、パフォーマンス上全体の2番手に位置するマシンで表彰台3回のみというのはいただけない。
正直なライコネンは、今年の自分のパフォーマンスは「平均的」と認めている。
12.カルロス・サインツJr.(トロロッソ):6.8点
「非常に優れていたが運に恵まれず」
彼にとっては非常に不運な年だった。あまりにも多くの信頼性のトラブルに見舞われ、ポイントを獲得するチャンスを逃した。マックス・フェルスタッペンと同じ年にデビューしたというのも不運だった。
サインツのパフォーマンスは非常に優れていた。しかしピークがフェルスタッペンのレベルには届かなかった。シングルシーターにおける経験はサインツの方が多いことを考えると、彼はフェルスタッペンを上まわる結果を出さなければならなかった。
それでも成熟度と技術面の理解度の高さはチームも高く評価しており、昨年末に彼を信頼してシートを与えたレッドブルの決断が正しいことが証明された。
12.フェリペ・マッサ(ウイリアムズ):6.8点
「途中まではチームメイトを凌ぐ」
フェラーリでの最後の年、2013年のマッサは悲惨だったが、その際に受けた批判の声を打ち消す走りを見せ続けている。
今年に関しては最初の3分の2はチームメイトより優れていた。予選でバルテリ・ボッタスよりいい結果を出し、決勝でも安定していた。
しかし終盤はリタイアがあり、次第にボッタスが優勢になってきた。それでもシーズン全体を見ると、今年はマッサにとって素晴らしいシーズンだったといえるだろう。
12.ダニール・クビアト(レッドブル・レーシング):6.8点
「自分でも満足はしていないはず」
レッドブルのシーズン序盤の苦戦が響き、クビアトは昨年まで所属していたトロロッソに乗るルーキーたちへの敗北を受け入れなければならなかった。
モナコではチームメイトのダニエル・リカルドをスタートで抜き、4位フィニッシュ、この好結果で波に乗り始めた。マシンの改善と共にクビアト自身のパフォーマンスも上向き、運の要素もあったものの、シーズン後半はリカルドを上回るポイントを稼いだ。
時に素晴らしい走りを見せたクビアトだが(特にスパとメキシコ)、もっとうまくやる余地があったことは自身が一番よく分かっていることだろう。
11.ニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア):7点
「本来のレベルには届かず」
今年はF1では彼の見事な活躍が見られなかった。全体的にいい走りをしてはいたが、期待したほどのレベルには達しなかった。
ル・マン24時間レースで勝利した直後のオーストリアではウイリアムズのボッタスと戦ってみせた。このレースが彼にとっての今季ベストレースだろう。
シーズン後半にも堅実にポイントを稼ぎ続けたが、彼らしからぬミスも何度かあり(シンガポールとロシア)、VJM08のBスペック完全版が導入された後は、チームメイトのセルジオ・ペレスの陰に隠れてしまった。
8.ジェンソン・バトン(マクラーレン):7.2点
「困難の中、一貫していい走り見せた」
新しいチームメイトのアロンソを相手にいい戦いができたと、本人も感じているはずだ。
マクラーレン・ホンダにとって難しい一年で、シーズンを通してトラブルが相次いだが、それでもバトンは一貫していい走りをした。
ロシアでアロンソを上回る結果を出し、アメリカではチームメイトより古い仕様のエンジンを使いながら6位を獲得したのは見事だった。
彼らしからぬシーンも何度かあり、スペインではマシンのハンドリングの悪さを克服できず、中国ではマルドナドと接触した。しかし全体的に見ると、バトンは今年も強さを発揮したといっていいだろう。
8.セルジオ・ペレス(フォース・インディア):7.2点
「強力なチームメイトを上回り、表彰台も」
チームと共に、シーズンが終盤に近づくにつれてよくなっていった。去年はミスが多すぎたが、今年のペレスは素晴らしかった。特にシーズン後半には予選に関しても入賞率に関しても、評価が高いチームメイト、ヒュルケンベルグを凌いでいた。
高いパフォーマンスに一貫性が加わり、素晴らしいレベルに到達していた。バーレーンとモナコでは旧型仕様で見事な仕事をし、ロシアでは表彰台を獲得、アブダビではフェラーリに挑む強さを見せた。
8.ロマン・グロージャン(ロータス):7.2点
「見事な予選。ハイライトは表彰台」
2013年後半から常に見事なパフォーマンスを見せている。昨年はマシンに足を引っ張られたが、今季マシンが改善し結果もついてきた。
ハイライトはもちろんベルギーの表彰台。また、ブラジルとアブダビで下位グリッドから見せた挽回も素晴らしかった。
しかし今年のグロージャンの素晴らしさは予選パフォーマンスにある。マルドナドは批判もあるが速いことは間違いない。グロージャンはしばしばFP1でマシンをリザーブドライバーのジョリオン・パーマーに譲らなければならない状況でありながら、そのマルドナドに勝ってみせたのだ。
5.フェルナンド・アロンソ(マクラーレン):7.3点
「マシンも彼ほどの力を発揮していれば……」
テストでクラッシュした際に脳震盪を起こしたため、開幕戦を欠場、1戦遅れてシーズンを開始した。しかしレースに復帰した後は常に優れたパフォーマンスを発揮した。
何度か非常に見事な予選ラップを走った(ポールポジション争いではなく、Q2進出を賭けた戦いの中で記録したものだが)。時折マクラーレン・ホンダの限界にフラストレーションを抑え切れなくなったものの、大部分のレースで根気よく力を注ぎ続けた。
ロシアではペースがあまりよくなく、アブダビ決勝の1コーナーでは珍しく判断ミスをしたが、それを除くとアロンソは期待どおり、素晴らしい仕事をした。マシンがそうでなかったことがただただ残念だ。
5.バルテリ・ボッタス(ウイリアムズ):7.3点
「F1の期待の星として成長」
ボッタスは今年も素晴らしいシーズンを送り、F1における期待の星というポジションをさらに固めた。
FW37がフェラーリにチャレンジできるだけの速さを持っているときには、ボッタスはかならずフェラーリに挑んだ。安定したレースパフォーマンスによって、同郷のライコネンとのランキング4位争いで善戦した。
シーズン序盤は予選でチームメイトのマッサに負け続けたが、夏休み後に形勢を逆転した。
特に決勝1周目にはバトルで強気に出ないようなシーンもあったが、シーズン終盤のライコネンとのバトルで、簡単に引くドライバーではないということを証明した。
5.マックス・フェルスタッペン(トロロッソ):7.3点
「強烈な印象を残したルーキー」
シングルシーターでのレース経験わずか1年のみでF1にデビューしたにもかかわらず、強い印象を残した。ルーキーにありがちなミスはいくつかあったが(モナコでグロージャンのロータスに突っ込んだことなど)、シーズンを通してすばやく進歩し、特に予選パフォーマンスが素晴らしかった。
強い印象を与えたのはバトルの技であろうが、レースディスタンスを通して安定して速く走れること、トリッキーなピレリタイヤにすぐに適応できたのも見事だった。
4.ダニエル・リカルド(レッドブル・レーシング):7.4点
「劣ったマシンで優れた結果出した」
リカルドの気持ちの強さが試されるシーズンだった。昨年は3勝を挙げ、プレッシャーに打ち勝てることを証明したが、今年はパフォーマンスが劣ったマシンでどこまで結果を出せるかという課題に挑戦しなければならなかった。
シーズンを通してほとんどの場合、彼は見事な走りを披露した。カナダは例外で、この時彼はフラストレーションに負けて力を存分に発揮できなかった。
マシンが向上し始めたシーズン後半(特にハンガリー、シンガポール、イタリア)での彼の走りは実に見事だった。
3.ニコ・ロズベルグ(メルセデス):7.8点
「形勢逆転でライバルに存在感示す」
今年ほとんどのレースで、チームメイトに比べると平凡に見えた。2014年よりもいいレースはしたものの、特に予選ではハミルトンがほとんどの場合、一歩前にいたのだ。
しかしシンガポールの後、状況が変わった。終盤6戦でロズベルグはポールを獲得、最後の3戦では連勝も成し遂げた。
集中し直して改善できた、その能力は素晴らしかった。ハミルトンを含め誰もが、ロズベルグは2位に甘んじる男ではないということを思い知ったのだ。
2.セバスチャン・ベッテル(フェラーリ):8.1点
「移籍し復調。強敵をしばしば破る」
フェラーリに移り、ベッテルは変わった。2014年は苦戦したものの、ベッテルは立ち直り、今年は安定して素晴らしい走りを披露するようになった。
一番印象に残ったのは、マシンの力以上のポジションを何度かつかんだことだ。予選でメルセデスを破ってフロントロウを3回獲得、3勝を挙げた。
シンガポールでのポールポジションラップは、今年の全ドライバーの予選パフォーマンスの中で最も優れたものといっていいだろう。
彼は表彰台を重ね、望みが薄いとはいえタイトル争いにとどまり続けた。今年のベッテルの姿勢、そしてミスの少なさはチームに好印象を与えた。
1.ルイス・ハミルトン(メルセデス):8.4点
「ほぼ完璧なシーズンで逃げ切り、今年も王座に」
シーズンの4分の3はほぼ完璧だった。最大のライバル、ロズベルグはシンガポールの後、予選パフォーマンスを向上して優位に立ったものの、そのころにはハミルトンは3度目のタイトルをほぼ手中に収めていた。
いくつかの予選ラップ、たとえばバーレーン、モナコ、ハンガリーは卓越しており、ハンガリー、日本、アメリカの決勝パフォーマンスは、彼が最もてごわいレーサーのひとりであることを証明するものだった。
残り3戦の時点でタイトルを獲得したのは、シーズンのほとんどにおいていかに彼が手がつけられないほど強かったかの証である。終盤はロズベルグが優勢だったが、シーズン全体で優れたパフォーマンスを発揮したハミルトンが、このランキングでも首位を獲得する結果になった。
英AUTOSPORTによる2015年の各ドライバーの評価平均点と総合ランキングは以下のとおり(点数集計は英AUTOSPORTによる)。
1.ルイス・ハミルトン(メルセデス):8.4点
2.セバスチャン・ベッテル(フェラーリ):8.1点
3.ニコ・ロズベルグ(メルセデス):7.8点
4.ダニエル・リカルド(レッドブル・レーシング):7.4点
5.フェルナンド・アロンソ(マクラーレン):7.3点
5.バルテリ・ボッタス(ウイリアムズ):7.3点
5.マックス・フェルスタッペン(トロロッソ):7.3点
8.ジェンソン・バトン(マクラーレン):7.2点
8.ロマン・グロージャン(ロータス):7.2点
8.セルジオ・ペレス(フォース・インディア):7.2点
11.ニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア):7点
12.カルロス・サインツJr.(トロロッソ):6.8点
12.フェリペ・マッサ(ウイリアムズ):6.8点
12.ダニール・クビアト(レッドブル・レーシング):6.8点
15.キミ・ライコネン(フェラーリ):6.5点
16.ウィル・スティーブンス(マノー・マルシャ):6.4点
17.フェリペ・ナッセ(ザウバー):6.3点
18.マーカス・エリクソン(ザウバー):6.2点
19.ロベルト・メリ(マノー・マルシャ):5.8点
20.パストール・マルドナド(ロータス):5.7点
※ランク外
アレクサンダー・ロッシ(マノー・マルシャ):7点(5戦出場)
(スティーブンスをしのぐパフォーマンスを見せた)
ケビン・マグヌッセン(マクラーレン):5点(1戦出場)
(才能あるドライバーにもかかわらず不遇な一年送る)