今年でF1日本グランプリ開催25回目を迎える鈴鹿サーキット。過去24回のレースの中からファンの投票により選ばれたベスト10レースを連載形式で紹介していきます。第6位は、表面化したアイルトン・セナとアラン・プロストの確執が、シケインでの接触という劇的な結末を呼んだ1989年のレースです。
1989年も引き続き、マクラーレンHondaのチームメイト、アイルトン・セナとアラン・プロストによるチャンピオンタイトル争いが繰り広げられた。このタイトル争いはコース外にも波及。お互いが会話する事もない、険悪な雰囲気に発展していった。
タイトル獲得のためには優勝するしかない状況で、第15戦日本グランプリを迎えたセナは、予選でプロストに1.7秒もの差をつける圧倒的な速さでポール・ポジションを獲得した。しかしプロストは焦っていなかった。2番グリッドからでも優勝できる自信があったからだ。
その自信を裏付けるかのように、スタートでセナの前に出たプロストは序盤にスパートをかけ、セナを4秒突き放した。しかしセナも渾身の走りで差を詰める。それを見たプロストはさらにペースを上げる。2人の極限の精神戦がレース終盤まで続いた。
セナは最後の力を振り絞り、残り10周でプロストの背後に迫った。コーナーで差を詰めるセナ。しかし直線重視セッティングのプロストは、ストレートで差を広げる。抜けない。
残り6周、セナが仕掛けた。シケインのブレーキをギリギリまで遅らせ、一気に横に並びかけたのだ。完全に並ぶことができなかったセナの存在を無視するかのように、プロストはそのままシケインにターンイン。そして接触。
タイヤ同士が絡み合い止まってしまった2台。プロストはすぐにマシンから降りたが、セナはここで諦めることはできない。止まってしまったエンジンを再始動させるため、オフィシャルに「押してくれ!」と手ぶりで指示した。
オフィシャルに押され息を吹き返したセナのマシンは、シケインをショートカットしながら2位でコースに復帰。もう残り周回は少ない。必死にトップのマシンを追い、プロストに仕掛けた時と同じようにシケインのブレーキングで横に並んだ。
「また当たる!」
サーキットは悲鳴に包まれたが、今回はシケインまでに前へ出た。自身の持てる力を最大限に発揮し、最後は完璧なオーバーテイクを決めトップチェッカーを受けたセナ。しかし彼が表彰台に姿を現すことはなかった。シケインショートカットで失格の裁定が下ったのだ。これでプロストの2度目のチャンピオンが決定
。今でも語り継がれる、優勝だけを見据えたセナの走り、そしてシケインでの接触。セナ・プロ対決と呼ばれた2人の運命のドラマは、ここからさらにヒートアップしていった。