IZODインディカー・シリーズ第4戦がブラジルのサンパウロ市街地で開催され、ジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポート)がファイナルラップの最終ターンで佐藤琢磨(AJフォイト)を交わし、今季2勝目を飾った。2連勝を目前の逃した琢磨だったが、2位を獲得し日本人初となるランキングトップに立った。

 予選は12番手とマシンがなかなか思うように仕上がらず、佐藤琢磨の2連勝は難しいものと映っていた。しかし、ウォームアップ・セッションでも今ひとつの状態にあったマシンのセットアップを琢磨とエンジニアリング・スタッフは決勝前に変更し、強力なマシンへと替えてみせた。

 スタートで2つ、9周目のリスタートでも2つポジションを上げていった琢磨は、1回目のピットストップでさらに3つも順位をゲイン。34周目にはライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)をパスし、セバスチャン・ブルデー(ドラゴン・レーシング)がピットしたことでトップに立った。

 しかし、このリードを琢磨陣営は短時間で手放してしまう。37周目に出されたフルコースコーションでチームは琢磨をピットへと呼び入れたのだ。まだ1回目のピットストップから17周しか走っていない時点で、ゴールまでは38周も残っていた。案の定、琢磨の後ろのトップグループはほとんどがコース上にステイアウトする作戦に出た。2年前の同じサンパウロでのレースがが思い起こされた。あの時はピットが琢磨を呼び入れなかったことで勝利を逃している。

 19番手まで順位を下げた琢磨だったが、39周目のリスタートで2つポジションアップ。ここで多重クラッシュが発生すると、フルコースコーションを利用して3回目のピットインを42周目に行って燃料を追加する。トップグループが最低でも1回の給油をする必要がある状況下、琢磨は燃費セーブを成功させればゴールまでピットインせずに走り切ることが可能となった。

 53周目、再び琢磨はピットへ呼び入れられた。2番手を手放してでも給油を行い、ゴールまでは燃料の心配をしなくていいように作戦を変更したのだ。

 54周目のリスタート、琢磨はマルコ・アンドレッティ(アンドレティ・オートスポート)をパスして3番手に上がり、最終コーナーではヒンチクリフを抜いて2番手となった。そして56周目にJR.ヒルデブランド(パンサー・レーシング)がピットへ。琢磨はトップに返り咲く。

 レースは残り20周と終盤戦へ突入。59周目にリスタートは切られ、75周のゴールまでの死闘が始まった。

 まず琢磨に襲いかかったのはデビュー2年目のジョセフ・ニューガーデン(サラ・フィッシャー・レーシング)だった。バックストレッチ・エンドのヘアピン進入やヘアピンの立ち上がりなど、何度か彼は琢磨の横に並びかけたが、ギリギリのところで琢磨はトップを守り続けた。

 琢磨へのアタックでタイヤを酷使し過ぎたニューガーデンは、72周目にヒンチクリフにパスされ3番手へと後退。その後の彼はゴールまでにさらに2台にパスを許し、5位となった。もう少しクレバーだったら、彼は初優勝ができたか、2位でのゴールを実現していただろう。琢磨の真後ろにつけた62周目、すぐさまトップを狙ってアタックしたが、あれは時期尚早だった。悔しいレースとなったニューガーデンだが、自己ベストの9位を大きく上回るリザルトを手にした。

 琢磨のゴール目前のドライビングは素晴らしかった。37周目の2回目のピットで装着した新品のレッド・タイヤは、もう完全にグリップを失っていたからだ。あとひとつ、最終ラップの最終コーナーを守り切れていたら、彼は2連勝を飾れていた。16周も少ないラップ数しか走っていないフレッシュ・レッドを履いたニューガーデンは何とか封じ込めたものの、同じく16周少ない距離しか走っていないフレッシュ・レッドを使うヒンチクリフには最後の最後でパスを許してしまった。

 今季2勝目を挙げたヒンチクリフは、「これ以上にカッコいい勝ち方はない。最終ラップの最終コーナーでトップを奪った。琢磨はコース幅をフルに使って走っており、インサイドをガッチリ守っていた。2ラップぐらいは、ちょっと守り過ぎていたぐらいだったと思う。しかし、最後にブレーキングでほんの少しだけ行き過ぎた。それで僕はインに飛び込み、勝つことになった」と語った。

 琢磨は、「12番手スタートでしたから、2位でも良い結果だと思います。もちろん、あと少しで勝てなかったことは非常に悔しいんですけど、チームが凄く頑張ってくれています。今日はヒンチがうまく戦ったということです。僕の方は37周目から使っていたレッドだったので、最後はもうグリップが全然なかった。ブレーキにも少し問題が出ていました。ポイントリーダーになってインディ500に向う。これは素晴らしいことです。今の勢いを保ってインディ500でもいいレースを戦いたいですね」とコメントした。

 ロングビーチでの優勝と今回の2位フィニッシュによる大量得点で琢磨はチャンピオンシップ・ポイントを134点に伸ばし、ポイントリーダーの座に躍り出た。これは日本人ドライバーとして史上初のことだ。ランキング2位には、今回3位フィニッシュしたアンドレッティが浮上しているが、琢磨は彼に12点の差をつけている。

 ランキング3位はブラジルにポイントリーダーとして帰国していたエリオ・カストロネベスで、今日2勝目を挙げながら、2戦でリタイアを喫しているヒンチクリフがランキング4位に浮上している。

 ポールスタートだったハンター-レイは終盤のタイヤにパンクがあり11位フィニッシュ。例年ロード・ストリートコースで強さを見せているウィル・パワー(チーム・ペンスキー)は排気管トラブルから序盤でリタイアを喫し、ポイントランキングは18位に低迷している。

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