IZODインディカー・シリーズの開幕戦がフロリダ州セント・ピーターズバーグ市街地で開催され、24日に行われた決勝レースは、参戦3年目のジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポート)がインディカー初勝利を挙げた。フロントローからスタートした佐藤琢磨(AJフォイト)は、中盤下位に沈むも最終スティントで追い上げ8位でレースを終えている。
朝方は曇り空に覆われていたセント・ピーターズバーグだったが、決勝スタートを前に風に雲は流され、青空が広がった。レースはドライ・コンディションでスタートし、雨が降ることなくゴールを迎えた。
レースはスタートからポールポジションのウィル・パワー(ペンスキー)がリードを広げ、佐藤琢磨は少し離れた2番手をキープ。3、4番手にはスタート直後にシモーナ・デ・シルベストロ(KVRT)をパスして浮上してきたヒンチクリフとエリオ・カストロネベス(ペンスキー)が続いた。
今年最初のフルコースコーションは、意外にもダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ)によって出される。ピットストップを終えた直後、温まっていないタイヤでマシンのコントロールを失い、ターン4外側の壁にハード・ヒットしたのだ。これでフランキッティはリタイア。開幕戦で最下位という苦々しいシーズン・スタートとなった。
このコーション中にトップグループが最初のピットストップを行い、カストロネベスが琢磨をかわして2番手へと浮上。コース清掃が終わってグリーンフラッグが降り降ろされると、彼はチームメイトのパワーをパスしてトップに立った。
1-2体制で走るペンスキー勢に果敢にアタックしたのがヒンチクリフで、彼は110周のレースが60周を過ぎたところでパワーを抜いて2番手へと浮上。
74周目にルーキーのセバスチャン・サーベドラ(ドラゴン・レーシング)がターン10のタイヤバリアに突っ込み、4回目のフルコースコーションが出された。このコーション中にJR.ヒルデブランド(パンサー・レーシング)がターン9で前を走行していたパワーに追突。これでパワーは、優勝争いから離脱する。
アクシデントが重なって長くなったコーションの後、85周目にリスタートが切られると、ターン1のブレーキングをカストロネベスがミス。そのチャンスを逃さずヒンチクリフはトップに立ち、その後はベテラン・ドライバーの攻撃を凌ぎ切ると1秒0982の差をつけ、キャリア初優勝を飾った。カナダ人のインディカー・レース優勝は2007年のポール・トレイシー以来(クリーブランドでのチャンプカー戦)だ。
「ミスを最小限に抑えることが勝利に繋がると考えていた。今日の僕らのマシンは本当の最速ではなかったかもしれない。しかし、とても良い仕上がりであったことも確かだ。ピットストップが最高だったし、僕らのマシンはブラック・タイヤで速かった」
「最後のリスタート、エリオはレッド・タイヤ装着で、こっちはブラックだった。そして、彼はミスを冒し、僕はトップに立った。でもまだ残り30周。エリオは、その30周をフルに使って逆転すればいいし、僕は燃費に小さな心配を抱えてもいた。そんな状況だったから、勝つ事ができて本当に嬉しい」とヒンチクリフは語った。
3位はデ・シルベストロが獲得するものと見られていたが、終盤にペース・アップしてきたマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)がゴール前5周で攻撃を開始。
アンドレッティの攻撃を防いでいたデ・シルベストロだったが、残り2周の最終コーナーで手痛いミスを冒してしまった。エントリーでラインを外れると、マルコだけでなく、その後ろにいたトニー・カナーン(KVRT)にまでパスされてしまったのだ。彼女はさらにゴール前でスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)にも抜かれ、6位でのゴールとなった。3位はマルコのものとなり、カナーンは4位でゴールした。
ディクソンは予選までの苦戦が嘘のように決勝では激しい走りを披露、オーバーテイクを積み上げて5位でフィニッシュした。最後にターボのトラブルさえ出なければ、表彰台にまで到達できていたかもしれない。それほどすばらしいレースを彼は戦っていた。
予選2番手とフロントローからスタートした琢磨は、レース中盤でフロントウイングを破損し、ペースダウン。残り30周でノーズ交換を行った時には16番手にまでポジションを下げていたが、壊れていないウイングを装着したマシンで息を吹き返し、ライバル勢を次々とパスして8位でのゴールを果たした
「たくさんの課題が見つかったレースだったけれど、8位まで挽回してゴールができた。これはチームの頑張りのおかげなので、それには感謝します」と琢磨はレース後に語った。マシン・ダメージによるペースダウンだけでなく、ピット・ストップで順位を落とすことも多かった今回の琢磨、フォイトのチームはピット作業をより迅速かつ確実なものにしなければならない。