F1シーズン開幕前、最後のテストを終えたチーム関係者が語る、2016年ニューマシンの手ごたえ。ルノーは新任チーフテクニカルオフィサーのボブ・ベルと、ロータス時代から現場の指揮を執ってきたトラックサイドオペレーションズディレクターのアラン・パルメインに話を聞いた。
──新チームで新しい開幕を迎える心境は?
ベル:我々が一緒に仕事を開始した当初は、さまざまな難題をクリアしなければならず、必ずしも順調な船出だったと言えないことは確かだ。しかし、チームは落ち着いて的確な作業を続けて、見事なリカバリーを披露してくれた。
パルメイン:私も今年は、これまで以上に新車が完成したことに喜びを感じている。何しろパワーユニットの決定が予定よりも大幅に遅れたために、新車を製作するリードタイムが非常に限られたものとなってしまったからね。そのような状況にも関わらず、デザインチームは、とてもいい仕事をしてくれたよ。
──\bR.S.16を、どう評価していますか。
パルメイン:新車の準備はルノーがロータスの買収に関して、基本的な合意を発表した9月下旬からスタートしていたものの、当時は昨年搭載していたメルセデスのパワーユニットでデザインしていた。その後ルノーによる正式な買収が決定しなかったため、車体のデザインをルノー製のパワーユニットに変更することが、なかなかできなかった。たかがパワーユニットの変更と思うかもしれないけど、メルセデスとルノーではパワーユニットのレイアウトが異なるのでクーリングシステムなどを収めるために、さまざまな変更を施さなければならなかった。重心だって違うからね。ギヤボックスも違うから、かなり大がかりな変更だったよ。つまり今年のマシンはメルセデス用にデザインされたものをリヤエンドだけルノー用に応急処置したものにすぎないんだ。
ベル:まずテストで走らせることを優先して新車を作った。その後、新しいパーツを製作して、たとえば新しいノーズなど間に合ったものから順次、投入している。今後もアップデートしていくつもりだ。これまでのところダウンフォース量も想定していたとおりの値を出しているし、ドライバビリティも良いという報告をドライバーから受けている。テストで得たデータをもとに、メルボルンに向けてセットアップを煮詰めているところだ。ただし現実的に考えて、シーズンのある時点で2017年のマシン開発に軸足をシフトしていかなければならないだろう。
──ルノーのパワーユニットは、どんな印象でしょうか。
ベル:今シーズン仕様のパワーユニットに、どれだけのトークンを使用したのかについて話すことはできない。だが、かなり多くのエリアで改善が行われており、ルノーの仕事に満足している。これはマニュファクチャラー間の性能差を是正するために改善されたトークンシステムに助けられたところもある。テストでは序盤ターボに問題が起きたが深刻な問題ではなく、すでに解決している。それ以降トラブルはなく、信頼面での向上は、うれしい驚きだったよ。
パルメイン:うちのチームがルノーのパワーユニットを使用するのは2014年以来だけど、当時に比べてパワー、ドライバビリティ、ソフトウェアの面で大きく改善している。はっきり言って、2年前に搭載していたものとは、まったく次元が違うパワーユニットになっている。
──今年はドライバーラインアップも一新しましたが、どうでしょう?
パルメイン:ケビン(マグヌッセン)はテストで、ほぼ予定どおりのプログラムを消化した。かなりのマイレージを走り込んでおり、開幕戦へ向けて準備は整っている。一方、ジョリー(パーマー)に関しては、不運にも彼が担当する日にトラブルが連続して発生してしまい、必ずしも理想的なテストだったと言えない。だが、最終日は良いかたちで仕上げることができたので、あまり心配はしていない。
ベル:ふたりとも、よくやっている。すでにF1の経験が1シーズンあるケビンについては心配していない。ジョリオンは最後のテストでギヤボックストラブルに見舞われて、フルレースシミュレーションが行えなかった。しかし、いくつかの行程に分けて、実戦感覚のテストは済ませているから、開幕戦に向けて不安はない。とはいえ、我々の現時点での目標は、とにかく完走することだよ。