昨年までスクーデリア・フェラーリで、ビークル&タイヤインタラクション・デベロップメントとして活躍した浜島裕英。その浜島さんのコラムがF1速報サイトで連載中です。題して、「浜島裕英のグランプリ人事査定」。今回、F1速報サイトでしか読めない第3回コラムの一部をお届けします。

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第三回:コミュニケーション

 第2戦マレーシアGP。フリープラクティス2のロングランが行われた後、フェラーリのタイヤのデグラデーションが、オーストラリアGP同様、メルセデスAMGを含む他チーム対比で小さく、しかもタイヤの“もち”も良いことが分かりました。しかしそれでも、一発の速さでは、メルセデスAMG勢が優位に立っていたのは事実なのです。

 このデグラデーションの差は、何から来るのでしょうか。皆さんは、“閾値(しきいち)”という言葉をご存知でしょうか? 大辞林によれば、「一般に反応その他の現象を起こさせるために加えなければならない最小のエネルギーの値」とあります。

 例えば、新品の消しゴムを思い浮かべてください。あなたがこれを曲げたり戻したりした、としましょう。小さな曲げ(変形)、すなわち小さな力(入力)の時には、消しゴムは元に戻って、何事も無かったかのように新品のままですよね? ところが、ある一定値以上の変形、すなわち大きな力(入力)で曲げると、ヒビが入り始めます。このヒビが出始める入力の値が、消しゴムを破壊する“閾値”なわけです。

 レースタイヤにも同じことが当てはまる部分があります。タイヤへの入力、例えば、トレッドコンパウンドを変形させる力が、メルセデスAMGとフェラーリで微妙に違っていて、メルセデスAMGの方が少し大きかったとしましょう。分かりやすくするために、例えば、メルセデスAMGが100の入力でフェラーリが90だとします。

 今回のレースで使った、ハードのコンパウンドが、劣化していく閾値が99で、ミディアムが91だったと仮定しましょう。すると、メルセデスAMGの場合、ハードでもミディアムでも、入力が閾値を超えているため、劣化していってしまうわけです。勿論、閾値を大きく超えたミディアムの方の劣化がハードよりも大きくなることは容易に想像できますよね?
 一方のフェラーリはどうでしょう。ハードでもミディアムでも、その閾値を超えることはありません。したがってフェラーリには、コンパウンドの劣化(デグラデーション)が起きないことになるわけです。今回のレースでは、この差を上手く活かしたフェラーリのセバスチャン・ベッテルが優勝できたのだろうと考えられます。

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チームメイトのキミ・ライコネンに関しては…

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