シーズン開幕前テストの最終日、メルセデスはルイス・ハミルトンのマシンにトラブルが発生して、赤旗を出してしまったメルセデス。しかし直接のライバルと目されているフェラーリが、すでに複数回トラブルに見舞われていることを考えると、メルセデスの信頼性は依然、高いレベルにある。なお今回のトラブルはパワーユニットではなく、ギヤボックスだった。

 信頼性に問題がないとすれば、パフォーマンスはどうか。8日間のテストでメルセデスがトップタイムを刻んだのは、2回目のテスト初日、3月1日だけ。ウインターテストで最も多く各日のトップタイムを出したのはフェラーリで、5回。メルセデスの1回はウイリアムズやフォース・インディアと並ぶ、2位タイである。

 だが、ここにもメルセデスの秘密が隠されている。メルセデス陣営は、テストでソフトタイヤとミディアムタイヤしか使用しなかった。今年から導入されたウルトラソフト、さらにスーパーソフトとハードもバルセロナでは一度も試さなかった。ある情報によれば、メルセデスが今回8日間のテストで使用したタイヤのセット数はミディアム60セットとソフト4セットだけだったという。その理由をメルセデスのチームマネージャーであるロン・メドウは、こう説明する。

「年間で使用できるタイヤのセット数が決まっているため、バルセロナのコースでパフォーマンスを確認しつつ、ロングランに耐えられるだけの耐久性を持つコンパウンドとなると、ミディアムしかないんだ」

 ミディアム以外に使用した4セットのソフトタイヤは、ふたりのドライバーがフルレースシミュレーションを行うために使用したもの。他のテストメニューは、すべてミディアムタイヤで行っていた。

 ピレリのレーシングマネージャー、マリオ・イゾラによれば「年間で使用できるタイヤのセット数はドライとウエットで1チーム110セット。今年のテストはプレシーズンの8日間と、インシーズンがスペインGP後のバルセロナ・テスト2日間、イギリスGP後のシルバーストン・テスト2日間の、あわせて4日間。年間の合計テスト日数は12日間となる。どのコンパウンドを、どこで使ってもいいのだが、1周でタイヤがボロボロになって使い物にならなくなっても1セットは1セットだ」

 つまり、メルセデスはロングラン中心のメニューを消化することを優先して、あえてタイムが出にくいミディアムを選択してテストしていたようだ。

 8日間の総合トップは3月3日にキミ・ライコネンが記録した1分22秒765で、メルセデスのベストは3月1日にニコ・ロズベルグが出した1分23秒022で、その差は約0.25秒。しかし、履いていたタイヤはライコネンがウルトラソフトで、ロズベルグがソフト。ピレリが両コンパウンド間タイム差を0.8〜1.2秒に設定していることを考えると、メルセデスの速さは容易に想像できる。

 もちろんバルセロナはウルトラソフトにとっては厳しすぎて、セクター3でタイヤを使い切ってしまうため、ライコネンのタイムはフェラーリのパフォーマンスを正しく示したものではないものの、メルセデスのアドバンテージは数字以上に大きいかもしれない。

 スーパーソフトやウルトラソフトでタイムアタックできずにテストを終了したロズベルグは、周囲の不安を一笑に付した。

「ここでスーパーソフトやウルトラソフトを履いても意味がない。誰が一番速いかは、メルボルンまでのお楽しみにしようよ」

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